香港:劉慧卿・立法会議員の言動に過剰反応する
チャイナ・デーリーなど中国系メディア

◆党首の舌鋒に切れ味
 香港の民主派政党の一翼を担う「前線(フロンティア)」といえば、ジャーナリスト出身の劉慧
卿(エミリー・ラウ)立法会議員が招集人を務める若い政党だ。香港が中国に返還される一年
前(一九九六年)に結党し、「中国返還は何も良いことがない」ときっぱり言い切る女性党首の
舌鋒には、親中派から「英国に帰れ」と非難を受けるほど、先見の明がある親英派エリートの
切れ味があった。

 その劉慧卿議員の言動が、最近、中国当局を強く刺激し、中国メディアや香港の中国系メデ
ィアが集中的に批判を繰り返す異常事態を起こしている。

 事の発端は、八月十六、十七の両日、台北市内で行われた群策会(李登輝前総統が提唱し
た超党派政策組織)主催の「一国二制度下の香港」と題する国際シンポジウムに香港から参
加した二十人のうちの一人として堂々と持論を展開したことだ。

 本来、六月に開催予定だった同シンポは新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影
響で八月に延期されたのだが、七月一日に香港で行われた国家安全条例案の制定に反対す
る約五十万人参加の大規模デモが民主派勢力の発言権を増大させ、その急先鋒として香港
の董建華行政長官に対して辞任を求める民間組織「倒董力量」スポークスマンにも就任した劉
慧卿議員が台湾を訪問したことは中国政府の神経を逆なでさせる結果となった。

 同シンポでは陳水扁総統が「(国家安全条例案の立法化基盤となる)香港基本法二三条は
民主をつぶす車の始動だ。香港を衰退させている」とあいさつ、李登輝前総統も出席し、台湾
本土派が「台湾は香港の二の舞には断じてならない」と中国政府に突き付けるようなインパクト
があった。

 中国当局が劉慧卿議員の台湾訪問を批判する中、劉議員はシンポで「香港の親中派メディ
アは私が台湾独立派を支持していると批判したが、台湾の前途は台湾住民自身が決定すべ
き問題だ」と述べて一躍スター扱い、「香港の一国二制度は完全に失敗したとは言えない。台
湾訪問は香港基本法に抵触すると指摘する人もいるが、私は怖くない」と話し、ひるむ様子は
まったくなかった。



◆署名入り記事で批判

 まず、同発言を受けて中国英字紙「チャイナ・デーリー」が「台湾で一国二制度の衰退を唱え
る」と報じて非難、「台湾人が台湾独立の立場を決定すれば、香港の独立を問う住民投票も可
能となり、国家分裂罪を犯すことになる」と批判キャンペーンを開始した。中国系香港紙「文匯
報」や「大公報」も同様な社論を展開。

 一方、劉慧卿議員は今月十四日、自ら結党した「前線」の結党七周年記念式典であいさつ
し、江沢民前中国国家主席が台湾統一について語った八項目事項(江八点)について「台湾
同胞の生活方式を十分に尊重する必要がある」と表記してありながら、自身がそれに基づいて
台湾の将来は台湾住民が決定すべきだと主張したことを非難するのは「親中派は江氏の八項
目事項を無視した言動だ」「こんな言語攻撃や嫌がらせに屈服することは断じてしない」と切り
返した。

 これに対して十七日付の「チャイナ・デーリー」(香港版)は劉慧卿議員の言論の自由につい
ての発言を批評、「台湾独立の言論を自ら作り出し、自由民主を濫用して民意の公的審判か
ら逃避している」「台湾問題を研究する学者は江氏の提唱した八項目事項を劉慧卿氏は歪曲
していると非難している」と署名入り記事として批判を繰り返している。

 劉慧卿議員が率いる「前線」は立法会の直接選挙枠で当選したのが劉氏と女性議員の何秀
蘭氏の二人。来年九月の立法会議員選挙に向けて、その前哨戦となる区議会議員選挙で十
二人の立候補者を擁立する構えだ。



◆理性的な反中共路線

 香港最大の民主派勢力で最大野党の民主党が表向きは反中国の政治的スタンスの一方、
尖閣列島問題では「保釣活動」と称して中国の所有権を主張して「愛国」運動を展開する反日
愛国の草の根支持基盤を広げており、日本にとってはやっかいな存在。

 一方、「前線」は愛国運動には一切加担せず、理性的な反中共路線を続けている。比較的
若い世代から支持されており、今回の一貫した中国当局の批判も健全な批判精神で切り返す
ことで若い世代の支持を広げ、次期選挙でも議席拡大を目指す。それだけに中国当局として
は香港での大規模デモの再来を防ぐためにも劉慧卿議員の言動を徹底して批判し、立法会議
員選挙で議席拡大を阻止したいとの狙いがある。



トップへ
トップへ
戻る
戻る