連載 北京五輪と中国



 連載 変わりゆく香港「一国二制度」10年の実験
 激戦・台湾総統選2004
 ルポ コピー天国・中国



北京五輪と中国 (1)

 来年八月八日に開幕する世界最大のスポーツの祭典、北京五輪まで残り一年を切った。アジアでは一九六四年の東京、八八年のソウル五輪以来、二十年ぶり三度目となる夏季五輪は人口十三億人を抱える大国・中国をどう変えていくのか。交通渋滞、環境問題、食の安全、人権問題など懸念材料が山積する中、開催都市・北京を中心に中国内部から見える矛盾や課題を追った。
(北京・深川耕治、写真も=07年9月6日記)


天空にそびえる“鳥の巣”

不動産は高騰、交通渋滞も

picture ぎりぎりまで突貫工事が続く、北京五輪開幕式が行われる国家体育場(通称“鳥の巣”)

 夏の北京は乾いた空気が高温と強風で土ぼこりを巻き上げる。北京五輪開幕式が行われるメーンスタジアム、国家体育場(通称“鳥の巣”)の周辺は、完成に向けてぎりぎりの突貫工事を続けているため、トラックが行き来するたびに土ぼこりが舞う。

 「二十四時間態勢の突貫工事が続いている。通常ルートの路線バスは五輪用競技場の建設期間、迂回(うかい)するために北京に至る所で大混雑している。早く五輪が始まってほしい」とオリンピック村建設地に隣接する住民たちは話す。実際、通常三十分で行けるバスのルートが一時間以上かかっている。

 「鳥の巣」と呼ばれ親しまれるメーンスタジアム・国家体育場は総工費三十五億元(五百二十五億円)で最大収容人数九万一千人。スイスの建築家ユニットヘルツォーク&ド・ムーロンが設計した傑作で、鳥の巣の枝が複雑に重なり合っているように見える巨大な建築物だ。建築工程では高い技術力が要求され、突貫工事で昼夜分かたず工事を進めても年内完成予定が来春以降までずれ込むことになりそうだ。

 鳥の巣に行くと、国内外の観光客が全貌(ぜんぼう)の見える場所に次々と集まってくる。鳥の巣の建設現場で働く湖南省出身の李栄雄さん(45)は「一昨日も温家宝首相が視察に来た。われわれは安全第一で建設しているが、完成するのは来年六月か七月、ぎりぎりまでかかりそうだ」と話す。

 また、北京出身の建設現場で働く于良慶さん(31)は「鳥の巣が完成してオリンピックが開催されれば、われわれの誇りだ。たくさんの人々が北京五輪を通して中国の良さを理解してもらえば自信になる」と胸を張る。

 建設現場で働く労働者は大半が地方出身の農民工(出稼ぎ労働者)。北京市の人口は約千七百万人で、北京に戸籍を持たない出稼ぎ労働者は五百十万七千人に急増している。八月初旬、オリンピック会場建設現場では湖北省芸術団の団員らが湖北省出身の農民工のために地元の歌や踊りを披露。北京近郊に約五万人が働く湖北省出身の農民工にとっては期限を迫られながら馬車馬のごとく働く中での憩いのひとときだった。最近はこのような農民工向けの青空慰労公演が頻繁に行われており、突貫工事のプレッシャーにつぶされそうな農民工たちにとって心安らぐ貴重な時間となっている。

 七月二日早朝、来年八月開催の北京五輪で卓球会場となっている北京大学体育館(収容人数八千人)で火災が発生し、一千平方メートルが焼失。開催に間に合うよう急ピッチで進められる北京五輪各競技会場の建設工事の安全性が問われる事態となった。現場に行くと、火災が発生した屋根の部分は青いビニールシートで覆われ、修復状態は外見からは見えない状態になっている。

 五輪開催会場周辺の不動産価格は急騰している。“鳥の巣”に程近い亜運村エリア。短期賃貸の場合、ここ一年で50%以上の家賃上昇率だ。来年五月に賃貸契約が切れる王宝宇さん(41)の場合、大家から契約延長の破棄を言い渡された。理由は急騰する不動産価格に対し、以前と同じ賃貸料では割に合わないからだ。

 地元の不動産業者によると、賃貸の短期更新を申請しても大家側は八、九割が拒絶する売り手市場。上海に劣らない不動産価格の急騰は五輪会場周辺の不動産事情を激変させ、賃貸住宅で生活する住民たちにとって大きな脅威となっている。




中国株スーパーバブル攻略法!