連載 北京五輪と中国



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北京五輪と中国 (10)

少林寺ビジネス、五輪で沸騰

IOC会長が訪問、新作映画も

picture 少林寺の野外武術ショー。観光客は1回30元(450円)を払って記念撮影できる

 八月八日、国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長は天安門広場で開かれた北京五輪一年前のカウントダウン式典に参加し、「北京五輪は世界に中国の歴史と文化、民族性を理解してもらい、交流することでウィン・ウィンの関係を構築できる」と述べた。懸念されている大気汚染問題についても「皆さんの懸念も分かるが、中国は最大の努力をしている」と解決に期待感をにじませる。

 ロゲ会長が翌九日、夫人を伴って訪れたのは「少林寺拳法」発祥の地として知られる河南省登封県嵩山の禅宗・少林寺だ。寺院内を参観し、少林武術ショーを楽しんだ。

 少林寺は西暦四九六年、孝文帝が禅寺として建立し、伝説上で禅宗の開祖達磨と結び付けることも多い。禅宗と少林拳の総本山として知られる。禅宗の聖地だが、少林カンフーブームで拳法の普及やそれに伴うビジネスが脚光を浴びている。最近ではは李連傑(ジェット・リー)が主演した一九八〇年代初めの大ヒット映画「少林寺」で一大ブームとなって以来、年間百万人を超える観光客でにぎわっている。

 ロゲ会長を出迎えた少林寺の釈永信住職はMBA(経営学修士)を持ち、辣腕(らつわん)の経営能力で少林寺を一大事業に変貌(へんぼう)させた。中国紙の報道では少林寺の年商は最低でも一億元(十五億円)以上とみられている。

 一九九九年、三十四歳の若さで少林寺の第三十代住職に就任し、傘下企業として少林寺実業発展有限公司を立ち上げ、お茶や関連グッズ販売など「少林」「少林寺」などの名で百以上の商標を申請登録。同寺横の「少林薬局」では漢方による独自開発した「秘薬」を販売している。六十カ国以上の海外公演で世界的な知名度を上げ、最近ではカンフーの世界チャンピオン「功夫之星」を決める大会をテレビ局と共同で主催した。携帯電話での投票を採用し、IT(情報技術)ビジネスにも精通している。

 大ヒットした一九八二年制作の「少林寺」に続き、リメーク版大型ドラマ「少林寺伝奇」(三部作、全百二十回)の第一部「乱世英雄」が六月から中国中央テレビ(CCTV)で放映され、新たな少林寺ブームを巻き起こそうとしている。香港と中国本土の有名俳優が共演し、製作費は六千万元(九億円)にも。
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 さらに北京の紅劇場では少林カンフーにバレエの要素を取り入れたエンターテインメント「少林伝奇」が外国人観光客を中心に人気を博している。

 嵩山少林寺の周辺には同寺が間接的に管理するものを含めて武術学校が六十八校あり、約五万人の生徒が学んでいる。

 一方で、「仏法の教えを忘れ、少林カンフーでの利益追求ばかり考えている」として釈永信住職を「袈裟(けさ)をまとった少林CEO(最高経営責任者)」と揶揄(やゆ)する声も根強い。

 少林寺は昨秋から寺に隣接する場所に三億五千万元(五十二億五千万円)を投じて「禅宗レジャーゾーン」を建設する計画を進めている。国内のネット掲示板では「少林寺は企業ではなく善男善女を仏法で善導する禅宗の寺であるべきだ。少林寺の文化を商業化することで寺院としての基本機能が崩壊し、青少年の信仰も歪(ゆが)められる」などの批判が相次いでいる。

 だが、一方で「今や少林寺は禅寺というよりも中国を象徴する文化ブランド。河南の地域振興の要となっている」(河南省鄭州の旅行会社社員)と少林寺の企業化を歓迎する声も多い。河南省政府や中国政府は少林寺を中国の文化ブランドとして支援、協力している。海外分院づくりに中国政府が積極協力し、中国語を海外で教える孔子学院と同等の評価を与えているほどだ。

 少林寺塔溝武術学校で学んでいる地元出身の鄭超勇君(15)は「将来、僧侶になるつもりで勉強している。武術学院は国内からは入学金なしで入れるけれでも海外からの留学生は入学金や授業料を支払っている」と話す。今後、少林寺ビジネスは北京五輪を機に中国政府の後押しを受けながらスポーツ文化振興の一大拠点として成長を続けていくことになろう。

(中国河南省登封県・深川耕治、写真も=07年9月18日記)




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