連載 北京五輪と中国



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北京五輪と中国 (11)

TVドラマ、現代劇が主流に

視聴率激戦でコスト削減

picture 河南省鄭州で行われた男性ユニットのミニコンサート。中国各地ではスターの卵たちが巡回コンサートで宣伝強化し、ファンサービスもきめ細かい

 北京や上海など大都市部ではテレビが有線ケーブルを通して数十チャンネル、有料で自由に視聴できる地域が増えている。北京に十年住んでいる朝鮮族の金竜英さん(26)は「同じ局の番組でも専門チャンネルが増え、ある意味では欧米のテレビ放送よりも面白い。私たちは若者に人気のある湖南衛星テレビを視聴し、ゴールデンタイムは必ず夫婦で人気番組『快楽男声』を見ている」と話す。

 同番組は湖南衛星テレビが全国各地の地区予選から素人の芸能人志望男性を募り、歌や踊り、パフォーマンスを通して視聴者やプロの審査員が人気投票しながらスターの卵を発掘していく内容。山口百恵などを発掘した日本の「スター誕生」中国版といったところだ。

 当初、二〇〇五年に制作した女性版オーディション番組「超級女声」が社会現象になるほど爆発的人気を呼び、二匹目のどじょうを狙った上海のテレビ局が「加油!好男児」という男性オーディション番組を制作して視聴率が「超級女声」を超えた。

 負けじと湖南衛星テレビは男性版の「快楽男声」を制作し、七月下旬、勝ち抜いた十三人で決勝が行われ、高視聴率が続く。

 携帯電話での投票では一位に輝いた陳楚生さんが三百三十一万票、二位の蘇醒さんが二百五十七万票。政治に関しては投票権が制限される一般国民にとって、自分の一票で人気ランクが反映される新鮮さも手伝い、中国全土で大ブレイク。全国各地で新人デビューのためのミニライブが開かれている。

 河南省鄭州市中心部ではデビューしたばかりの男性五人組ユニットが野外ミニコンサートを開き、若い女性たちが黄色い声を張り上げ、熱狂する姿は日本の一九七〇年代を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 若者をターゲットにした視聴率の過当競争はテレビ局の制作内容を暴走させることも多い。八月二十三日、中国国家放送映画テレビ総局は、広東テレビ局が制作放映していた美容整形番組「美莱美麗新約」の放映禁止と同様の番組制作禁止を通達した。同番組は一般女性が手術を通して変貌(へんぼう)していく過程を紹介、「人造美女」ブームを巻き起こした。出演すれば芸能界入りもあり得る設定に応募者が殺到した。

 中国のテレビ業界は局数が昨年末までに三百局を超え、激戦時代に突入。各局の収益は九割以上が広告収入に依存し、急成長する私営企業はいかにゴールデンタイムに自社のCMを流すかでしのぎを削る。

 八月下旬、北京では第五回中国国際映画・テレビ番組展覧会が開かれた。五年前から年一回のペースで開かれている同展覧会は国産の最新ドラマ、映画作品を国内外のバイヤーに紹介する最大イベント。だが、今年は会場が閑散として入場者数が減った。

 首都映画制作業協会の尤小剛会長は「中国テレビドラマの供給過剰は四年前から続き、各制作会社は資金不足が逼迫(ひっぱく)している。人気スターが出演すれば視聴率が上がるというのは幻想で、テレビ局側はキャスティングよりもドラマのストーリー性を重視している」と話す。

 同展示会も各局の資金繰りが厳しくなったこともあり、年々縮小傾向。昨年は七百二十一社が出展したが、今年は五百十八社。テレビドラマの主流は現代ドラマで、時代劇ものは時代セットや衣装などでコスト高となり、低迷している。中国国際テレビ総公司映像事業部の張華副主任は「制作テーマが現代劇に集中し、時代劇は敬遠されるようになった。現代ドラマが細分化される理由は国内各地の視聴者の文化背景、細かい情感の表現方法、好みが違っていることが大きい」と説明。現代ドラマも内容が細分化し、過当競争で制作費のコスト削減ばかりが重視される状況だという。

 最近は奇抜で独創的なドラマが乏しく似たり寄ったりの現代劇の過当競争がテレビ制作でのさまざまな歪(ゆが)みを生み出している。ドラマ制作とは違うが、北京テレビが段ボール肉まん事件で物議を醸した“やらせ報道”には、視聴率競争に翻弄(ほんろう)されるテレビ局の苦悩が見え隠れする。

(深川耕治、写真も=07年9月19日記)




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