連載 北京五輪と中国



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北京五輪と中国 (4)

選手たちへの愛国教育を徹底

国威発揚、「中国軍魂」を鼓舞

picture 北京の軍事記念館で新鋭爆撃機と地対空ミサイルを眺める子供たち

 八月一日、北京の軍事記念館では、人民解放軍建軍八十周年を記念した展示会「われらの隊列は太陽に向かう――新中国建設以来の国防と軍隊建設成就」展が開かれ、胡錦濤総書記ら党最高幹部らと江沢民前総書記ら引退幹部らが参観した。ここで強調されたのは軍の発展を通した富国強兵、国威発揚である。

 最新兵器、ミサイル、ハイテク武器などが展示され、展示会期間中、入場無料であることから同二日には入場数が百万人を突破した。参観者に話を聞くと、市内から見学に来た石燕美さん(45)は「わが国の軍事力の振興状況がよく分かった。早く台湾との関係が回復することを望む」と“中台統一”の悲願を口にした。中国内では台湾が中国領の一部であるとの認識が徹底し、武力による統一も選択肢の一つとの共通認識があることの反映だ。

 劉先哲さん(30)は感想文に「永遠に忘れるな 中国軍魂」と書いた。本人いわく「建軍精神を忘れず、党の先兵としてこれからも人民を守り、愛国のために貢献したい」との意気込みを参観して強めたという。王鳳華ちゃん(7)は「祖国を守るために軍人さんたちが奮闘していることがよく分かった」と感想文を書いた。軍事博物館はまさに愛国教育基地でもあるのだ。

 七月二十九日、北京五輪に参加する中国水泳チームのメンバーらが一般客に紛れ、参観した。立体展示館で見た長江洪水の救済活動で奮闘する解放軍の蝋(ろう)人形や有人宇宙ロケットの開発技術の発展などに感動した様子だった。パネル展では解放軍のスポーツ選手のうち七人が合計十六回の世界一を獲得し、五人が十二回にわたって世界記録を更新したことが選手たちの心をとらえた、という。

 選手の一人は「このような愛国主義教育は確実に私たちの心をつかむ。軍隊が五十数年で巨大になったことはわれわれの誇りであり、北京五輪までさらに苦しい訓練を積んでも祖国のために勝つことが栄誉であることを改めて感じた」と話す。

 軍事力復興による愛国教育は、学生の愛国歴史教育に生かされるだけでなく、五輪出場予定のスポーツ選手のメダル獲得へのメンタリティーまで培うスポーツ振興のための重要な愛国教育基地となっているのである。

 北京南西郊外の盧溝橋近くにある中国人民抗日戦争記念館に行くと、抗日戦争の資料や古い著作が販売されている。一九三七年七月七日、盧溝橋で日本軍と中国軍との間で銃撃戦が起こり、これがきっかけとなって日中戦争が勃発(ぼっぱつ)した。パネルなどを通じて抗日兵士の勇敢な姿を紹介、愛国心を鼓舞している。

 「きょうは日本人の観光客四十七人を連れて来た。最近は日本人観光客がツアーで来ることが増えた」と日本の旅行社ガイドは話す。館員によると、来館する外国人は日本人が八割以上で同館の運営維持費に日本人は大きく貢献していることになるという。

 土産品売り場に行くと、毛沢東語録や抗日戦争で日本軍から殺された中国人兵士のグロテスクな死亡写真が載った資料本などが並ぶ。

 盧溝橋を含め、北京市内には国防教育基地に指定されている記念館や博物館、公園などが十九カ所ある。最近、北京市は「中華人民共和国国防教育法」の改正に向け、国防教育基地への小中学生入場を無料にする案を審議している。これに対して盧溝橋の抗日人民記念館側は、勤務する館員らの給与が支払えなくなると反対の構えだ。

(北京・深川耕治、写真も=07年9月10日記)



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