連載 北京五輪と中国



 連載 変わりゆく香港「一国二制度」10年の実験
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北京五輪と中国 (7)

投資目的の不動産購入増加

庶民は株式に熱狂

picture 北京市朝陽区では高層ビルの建設ラッシュが続く

 北京市朝陽区の中心部、地下鉄・国貿駅周辺は五つ星のホテルが林立し、中国中央電視台の新社屋の建設が続く。この一等地にある十万平方メートルの敷地に香港資本の不動産会社「香江国際」が六十階建ての高級マンションなどを次々と建設し、売り上げ好調だ。

 建設中のフォーチュンハイツ(御金台)は六十階建てで下層階はホテルや短期宿泊などに使用され、上層階が居住者用マンション。一平方メートル当たり三万二千元(約四十八万円)以上で販売している。

 営業計画センターの孫浮ウんは「投資目的で全体の三割が居留証を所持している外国人によって購入されている。香港、シンガポール、米国、日本、韓国などです。北京五輪以後も確実に不動産価格が上がるとみる購入者が多い」と話す。

 風水による間取りを取り入れて三面採光の明るさが高い評価を受けている。各部屋にトイレが付き、プライベート空間を重視している。建設中の四十二階に上がってみると、北京の全方位が見回せ、急速な建設ラッシュが続く北京市街の建物群が大気汚染で夕日にぼんやり霞(かす)んで見える。

 「温家宝首相が不動産高騰を抑えるマクロ経済政策を行っているので、首都・北京は不動産の高騰が抑制され、上海周辺のような異常高騰がなく、緩やかでも着実な価格上昇が魅力」と同社営業企画センターの孫■(「さんずい」に「吉」)代表は説明する。

 同社総裁は香港人女性で英国での会計士資格を持つ楊莉珊氏。徹底した香港不動産売買のノウハウを駆使し、安心、安全をモットーに首都北京でも商業活動が認められている。

 二〇〇四年、上海の不動産価格が急騰し、当局は転売益への課税や投資目的の外国人が購入することを制限することで上昇率を抑えた。しかし、〇七年第二・四半期の不動産価格上昇率を都市ごとに見てみると、一位が広西チワン族自治区北海(15・1%)、二位が広東省深セン(12・3%)、三位・浙江省温州(10・9%)、四位・北京(10・3%)の順で、首都北京は上海を抜いて不動産価格上昇率の上位にランクされている。

 北京の市街地では再開発が急速に進み、立ち退き問題も深刻化している。故宮の北、景山公園周辺。「輪タク(自転車タクシー)、乗らんかね」。真っ黒に日焼けした愛想の良い老婦人が声を掛けてきた。交渉成立後、「うちの旦那に電話するから」と言うと、わずか五分ほどで呂軍さん(54)が輪タクに乗って現れた。

 北京の横町や路地である胡同(フートン)を輪タクで回る。一九九七年からもう十年以上、この仕事を夫婦でしている呂さんによると、胡同は市内に三千以上あったが、区画整理と再開発で三分の二以上が消えているという。

 朝陽区で庶民的雰囲気の残る朝陽劇場の裏手。ここには証券会社の株式売買場がある。朝から老人や主婦層がぎっしり集まり、電光表示板を見ながら株式投機に熱が入る。

 「上海株式市況は五〇〇〇ポイントを突破して天井なしの上昇。きょうは一日で二万元(三十万円)儲(もう)けた」「株は北京五輪まで下がることはない。きょうは安定した三銘柄で一万元(十五万円)勝った」。証券会社の入り口では退職後、時間を持て余す老人たちが株の話で熱く語り合っている。

 最近、北京では一元(十五円)硬貨が落ちていても誰も拾おうとしないといわれるほど、株式投資熱は庶民の価値観を一変させ、中国の証券口座数は今年七月、一億一千万口座を突破した。旅行会社勤務の王小平さん(44)は「サラリーマン勤務はバカバカしくてやってられない。周りも転職したり、独立したりしていて、小口投資家になった方が儲かる」と十月にも会社を辞めて株で生活する準備を進めている。

 株式投資が北京で急速に流行し始めたのは二年前ぐらいからだ。上海での不動産価格急騰が政府のマクロ経済政策で抑制され、不動産投資が制限された反動で株式投資に資金が流入し、当分は株式投資熱は収まりそうにない。
(北京・深川耕治、写真も=07年9月15日記)



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