連載 北京五輪と中国



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 ルポ コピー天国・中国


北京五輪と中国 (8)

偽五輪グッズが氾濫

“コピー天国”汚名返上はいつ?

picture 北京の新秀水市場では個人交渉すると、奥から偽ブランドの高級バッグを取り出して見せる

 北京五輪の公式記念グッズの偽造品は政府の徹底取り締まりと反比例するような形で広がっている。北京市内の地下鉄西直門駅の前。農民工らが違法な露店を広げ、偽物グッズを販売している。明らかに出来栄えの劣る物もあるが、精巧に作られて見分けが付かない物が増え、値段も正規品より若干安いだけ。

 取り締まられやすい五輪マスコット「福娃(フーワー)」の大きな縫いぐるみは一セットしか置いていない。主に小さなアクセサリー類を販売。いつでも逃げ切れるように風呂敷の上に商品を載せている。

 「西直門周辺はいくらでも違法露店が出る。取り締まりが始まると、雲散霧消する」と中国地質大学に地下鉄通学する男子学生は話す。

 八月四日、北京市と五輪組織委員会法律事務部は、偽物撲滅キャンペーンとして市内の工人体育館で押収した偽五輪グッズ四万点を今年に入って初めて処分。押収された偽物は、「福娃」の縫いぐるみやロゴ入りTシャツ、マスコット、ロゴ入り携帯ストラップなどだ。北京市当局は、偽物か本物か見分けが付きにくい場合、確認のためのコールセンターに連絡し、偽物と判明すれば通報するよう市民に呼び掛けている。

 北京市朝陽区の新秀水市場。外国人観光客に圧倒的な人気を誇っていた衣料品商店街の秀水市場が撤去され、二〇〇五年三月に地上五階のショッピングセンターとして生まれ変わった。一階に正規の五輪マスコットを販売しているが、地下一階のバッグ売り場は偽造品を堂々と売り付ける。

 客には見本の冊子を見せ、サンプル写真の中から自分の気に入ったデザインを選択させ、交渉が決まった段階で裏から偽造品を袋に入れて客に見せる。

 ルイヴィトンのバッグが偽物かどうか試してみた。通常五千元(七万五千円)するものを電卓で表示させて二千七百元(四万五百円)と表示。「二千元だったら買う」と交渉すると二千五百元まで値を下げ、その後、若い女性の売り子が男性スタッフに目配せして裏から偽造品とおぼしきバッグを持ってきて見せる。「本物はバッグの底がこんな作りではない」と言うと、それまで笑顔だった女性の売り子二人が即座に両手をつかむ。彼らも必死だ。抵抗せずにいると別に害はないと思ったのか解放してくれた。

 中国の偽造品、模倣品問題で長年、悩んできたのは日本企業だ。ジェトロ(日本貿易振興機構)北京事務所には「日系企業ニセモノ館」を開設し、五年前から中国各地の日本製とされるニセモノを収集して展示している。ジェトロ北京事務所の調査では、偽造品の発見件数は年間千百件前後で全体の半数が広東省、次が上海、北京でそれぞれ二割程度。

 偽造のDVD再生機は正規品の半額以下で売買され、コンテナで広東省から香港へ三千台以上を送ると小リスクで高収益を得られることが闇業者にとって魅力という。ビデオカメラやデジタルカメラのバッテリー、プリンターのカートリッジの偽造品氾濫(はんらん)が深刻化し、バッテリーの突然発火やプリンター本体の故障などを引き起こしている。

 ジェトロ北京代表処知的財産権部の谷山稔男部長は「最近の中国政府は米国や日本の知財部門の法律制度を積極的に研究し、何度も現地視察して積極導入に意欲的だ。後は地方政府が現場の実務をどう対応していくかが重要で、法整備は徐々に改善されつつある」と話す。

 最近、日本国内の焼酎ブームなどの影響で日本酒の偽造品問題が増えている。ジェトロ北京代表処知財部顧問の土屋晶義氏は「日本の清酒協会、中国側の酒造組織が協力して解決へ動き始めている。カウンターパートを探し出し、交渉していくことが非常に重要で、相手国や相手地域、地元政府の利益になることを理解させ、そのおこぼれをわれわれも頂くという思考でないとうまくいかない」と語る。

 “コピー天国”の汚名返上はオリンピックには到底間に合いそうにない。

(北京・深川耕治、写真も=07年9月17日記)




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