連載 変わりゆく香港「一国二制度」10年の実験
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  特集 中華圏の魚食ブームを探る

【香港】中国からの観光客当て込む

現地人スタッフによる店づくり成功

日本食レストラン戦国時代

 香港は街中に日本食があふれている。回転寿司「元気寿司」をはじめ、大衆的な寿司店や「味干ラーメン」のような日系ラーメン店、牛丼チェーン店「吉野家」などがあるかと思えば、日本人調理師が切り盛りする高級日本料理店も点在している。


中国返還後、大陸から多数の観光客が訪れる香港。香港島ワンチャイで観光する大陸観光客たち

 中国本土から香港への団体旅行解禁をきっかけに香港には大挙して富裕層の本土客が押し寄せるようになり、顧客層の重心は大陸客に圧倒されるほど激変。香港の日本料理店でも大きな異変が起き始めている。

 「東京和食SUN」は日本のサントリー系列、若者が集まる香港島コーズウェイベイの日本料理店。タイムズスクエアの食天通という最高級フロアの十三階にある。開店したのは二〇〇三年八月。中国本土客の香港への個人旅行が一部解禁されたのは〇三年七月で、ちょうど、それに合わせてオープンし
タイムズスクエアにある「東京和食SUN」の寿司やすき焼き

た。その後、中国の大都市からの個人旅行が次々と解禁され、大陸富裕層の香港観光ブームは急速な広がりも見せる。

 香港人の女性店長、謝綺麗(イザベル・シェ)さんは「三年ほど前から急に中国大陸の富裕層の観光客が増え始め、それまで香港のローカル客が多くて一部が外国人だったのが逆転現象を起こし始めました。大陸の観光客が集中するコーズウェイベイの中心部に開店した効果はとても大きい」と話す。

 同店はサントリーの子会社、サントリーF&Bインターナショナルがアジア向けに新たな店舗展開をするために香港で第一号店を開店させ、その後、シンガポールに三店、上海の中心部、外灘に客席面積約一千平方メートル、三百席ある新店(〇六年十月オープン)も予想以上に好評で確かな中国大陸富裕層への手応えを感じている。
香港島コーズウェイベイのタイムズスクエアにある「東京和食SUN」

 同社の下野晋平財務課長は「超高級日本料理店でもなく、リーズナブルで大衆的な日本式料理店でもない中間に当たるような店がこれまで香港にはなかった。ちょうどそのレベルに狙いを絞って見事に当たった」と同店のコンセプトを説明する。

 仕入れなどを統括する同社の吉田慎二取締役は「食材は東京・築地や全国各地から仕入れ、直送している。香港の場合、衛生面の管理規制が厳しく、問題化するのを避けるために最初は人気だった釜飯を中心に出していたが、客の要望が多い刺し身や寿司のメニューを増やしていった」と香港人客や大陸客の細かい要望に応える時代となったことを強調、スタッフをすべて地元民にしていく完全現地化がコスト面、サービス面で成功するパターンであることを説明する。

 香港だけでなく、シンガポール、上海も、総責任者は日本人でも現場にはほとんど口を出さず、店長はじめスタッフが地元顧客のニーズに応える営業スタイルにしている。サントリーは約三十年前、高級日本料理店のレストランを初めて海外展開するためにメキシコを皮切りに二十数店舗経営していた時期があった。

 最近は超高級日本料理のブームは一段落したので、その流れを変え、アジアを中心に現地化する店舗を次々と立ち上げ、売り上げも堅調だ。

 (香港・深川耕治、写真も)