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2012年7月21日記


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尖閣問題で恫喝 あの手この手 中国
中国漁船の侵犯・武装化で挑発
観光ツアーで既成事実画策も

 
沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の購入計画を進めている東京都が政府に対して上陸許可を申請する動きや日本政府による尖閣諸島の国有化方針を受け、日中関係が緊張している。中国では武力行使をちらつかせる過激な論調が広がり、武装化すら呼びかける中国漁船による領海侵犯など台湾統一に使う文攻武嚇(ぶんこうぶかく)さながらの揺さ振りをかけているが、国内向けとの使い分けが巧妙で「見せかけの恫喝」の裏に弱腰批判を避ける焦りが見え隠れしている。(深川耕治=2012年7月21日記)

民間への監視規制緩まず
政府主導の対策に終始


 7月18日、北京で記者会見する中国民間保釣連合会の童増会長
 日本政府が尖閣諸島の国有化方針を表明しても石原慎太郎東京都知事は先行取得の立場を崩しておらず、東京都が購入資金として募っている寄付はすでに13億円超となっている。

 この動きに反発し、中国の漁業監視船が11日と12日、尖閣諸島周辺の日本領海内に繰り返し侵入。中国外務省の劉為民報道官は11日の会見で「釣魚島は古くから中国固有の領土。日本の抗議を受け入れられない」と反発し、中国の国際情報紙「環球時報」(12日付)は「中国は釣魚島海域の巡航を常態化させ、漁業監視船を徐々に武装船に換え、日本の海上保安庁の準軍艦と対等に渡り合えるようにすべきだ」と監視船の武装化を容認する社論だ。

 さらに尖閣諸島に行政機関や高レベルの軍事施設、軍事演習区を設けるなど過激な論調になっている。国内メディアでは「一戦も交えて構わない」とする急進的な軍人の意見も紹介し、国内世論の不満ガス抜きに追われている。

 しかし、中国政府は民間の反日団体への圧力、監視を緩めておらず、あくまで政府主導の対抗策に終始している。

 尖閣諸島の領有権を主張する中国や香港、台湾などの華人系団体で作る「世界華人保釣連盟」(2011年1月設立、本部・香港)の黄錫麟会長(台湾籍)は3日、同連盟会員2人、漁民6人と共に台湾北部の新北市内にある深澳漁港を漁船「全家福」号で出港し、台湾海巡署管轄の艦艇五艘に保護されながら尖閣諸島海域へ近づき、4日、日本領海を侵犯。

 日本の海上保安庁の巡視船に排除されたが、この際、中華民国の国旗(青天白日滿地紅旗)ではなく、中国旗である五星紅旗を掲げていたことや寄付金の大半が人民元であることから背後に中国政府の隠然たる演出があるとの見方も出てきた。香港の実業家、鄒錫昌氏は昨年発足した世界華人保釣連盟の創設大会で漁船「全家福」号を購入する資金の一部として100万香港ドル(1香港ドル=12円)を寄付。一部の企業家がスポンサーになっていることで活動資金が維持されている。

 中国では民営企業家が尖閣諸島を観光するクルーズ船購入を企画し、香港で寄付金を募り、米グアム在住の華人が尖閣抗議船に改造する漁船一艘(100トン)を購入。民間の保釣運動(尖閣諸島は中国領とする防衛活動)を徐々に拡大させている。

 世界華人保釣連盟の李義強秘書長は抗議船に五星紅旗を掲げた点について「台湾から出航した今回の保釣行動は、わが連盟が今年正式に計画した第一次の行動であり、漁船購入を含む総経費は完全に連盟から拠出している。乗船した黄錫麟氏は台湾中華保釣協会理事長であると同時に世界華人保釣連盟会長であり、同乗した台湾籍の張春明氏、游嘉文氏も同連盟の会員なので、台湾の代表であるだけでなく中国大陸や全世界の華人の代表だからだ」と説明している。

 さらに同連盟の組織実態について「中国大陸が主体であり、台湾、マカオ、欧米などの華人が協同参与している。中国は人口、経済、軍事の方面で世界華人保釣運動の最前列にあり、主力軍だが、遺憾ながら現状では中国大陸の活動家が直接前面に出ることは中国政府の圧力でできないのでせめて国旗だけでも掲げて彼らの意志が委嘱されている」(香港誌「亜洲週刊」7月22日号)と解説する。

 ここ数年来、中国政府は反日運動が反政府暴動に発展することを憂慮し、国内での民間反日団体、保釣活動に強い圧力を加え、漁船での尖閣諸島上陸計画を事前にことごとく阻止してきた。台湾との連携を模索していた福建省の民間活動家らは同省アモイで保釣活動に関するシンポジウムや写真展を企画したが、政府から封殺され、福建省沿岸では「防火防盗防保釣(防火、盗難防止、尖閣諸島の中国領防衛防止)」が流行語になるほど、政府の対応への不満がにじみ出て、ガス抜きが必要な事態に発展している。

 広東省深セン(土ヘンに川)の民営企業である深セン瑞致酒店管理公司の方利斌社長はこのほど2億元(1元=13円)で三百人乗船可能な5000トン級の大型クルーズ船の購入を決め、購入するクルーズ船で尖閣諸島海域を周遊するツアーを企画。中国政府に新航路の許可を得ようと活路を見出そうとしているが、現状では中国政府は動じない構えだ。

 この動きと連動し、18日、中国民間保釣連合会の童増会長は本人が関係する投資会社の名義で中国国家海洋局海島管理弁公室に尖閣諸島の観光開発による同諸島の借り上げを5月30日時点で申請したことを公表。中国海洋撮影協会と共同で釣魚島撮影団、旅行団を組織し、国家観光局に浙江省舟山あるいは福建省アモイから尖閣諸島へ出航する新航路締結を求める動きだが、同弁公室は回答を避けている。

 ただ、尖閣諸島の中国領既成事実化を目論むこの動きに対しては中国政府当局は黙殺するだろうとの冷ややかな受け止め方が専門家の間では多い。北京外交学院の周永生教授は「政府の保護なく、このような計画をしても実効性がないばかりか日本の海上保安庁に拿捕されに行くようなものだ。中国政府が釣魚島の土地を管理する機構すらない現状では訪問する人々の安全が脅かされるので、むしろ、琉球(沖縄)の独立を促して釣魚島の行政機構設置を図った方がより現実的だ」と分析している。