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2011年6月7日記


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市の強権で強制撤去続々 中国深セン
「美観損なう」一部業者排除

ユニバーシアード8月開催へ
 
第26回夏季ユニバーシアードが8月12日から12日間にわたって中国広東省深セン(土ヘンに川)市で開かれる。同市では疑いのある危険人物8万人以上を市外へ排除、景観を整える名目で商業看板が強制撤去されるケースも相次ぎ、香港メディアが非難している。元市長が贈収賄で死刑判決を受けるなど都市開発が進むほど幹部汚職がつきまとう。香港と隣接する経済特区は改革開放のモデル都市とは違う大都市に変貌しているのか、近年の動きを追った。(深川耕治=2011年6月7日記)

法的根拠薄い命令、汚職疑惑も
前市長、汚職で死刑判決


深センのユニバーシアード会場「水晶宮」
中国広東省深セン(土ヘンに川)市龍崗区にあるユニバーシアード夏季大会のメーンスタジアム「水晶石」。このような水晶の形の建物が二つある=深川耕治撮影
 中国での夏季ユニバーシアード大会開催は2001年の北京大会以来、2回目。19種目306競技が行われる。中国では08年の北京オリンピック、09年のハルビン冬季ユニバーシアード、10年の広州アジア競技大会に続き、4年連続の国際総合競技大会。国家の威信を懸けた大会となる。大会で会場に灯される「聖火」が5月4日、北京から深?に到着し、トーチリレーが大会を盛り上げている。

 メーン会場である龍崗区のメーンスタジアムは水晶のような形をしていることから「水晶石」と呼ばれ、ほぼ完成し、まるで同大会をきっかけに都市開発整備を進めるかのように、すでに周辺は小都市化している。

 同市公安当局は今年1月から4月10日までの100日間で危険人物締め出しキャンペーンを展開し、8万人の危険人物を市外へ追放。さらに7月末までに50万人の市民を動員して潜在的に市の脅威になると判断される人物を市外へ排除する計画だ。

深センの物質生活ブックバー
深セン(土ヘンに川)市当局から美観を損なうとの理由で看板を強制撤去させられた文化的な読書飲食バーとして知られる「物質生活」ブックバー=深川耕治撮影
 追放された危険人物は実際には失業した農民工や売春婦が多く、「危険と見なされる基準が曖昧。過敏すぎる治安対策は余りにも行き過ぎだ」(「深セン商報」記者)との不満が渦巻く。

 さらに深セン市政府はユニバーシアード期間中の労働者による給与未払いの集団陳情交渉を禁止し、違反者は厳罰に処す通知を4月末に公布。「法的根拠がなく、行政権限を超えている」(劉輝則深セン市政協委員)との内部批判が強まっただけでなく、「雇用主が給与をきちんと支給すれば集団陳情自体が起きない」(人民日報)との中央からの批判も厳しさを増し、深セン市政府は「公文書通知の審査チェックが甘かった」と同通知を撤回した。

 さらに「行き過ぎ」と非難されているのは、ユニバーシアード開催に合わせ、同市の景観整備プロジェクトとして同市福田区の商業施設の看板を強制撤去させ、統一規格の美化看板に替えるよう有名ブランド店にも要求。深センで自由に書物を読めるモダンで文化的な飲食バーとして知られる「物質生活」ブックバーが店外看板を強制撤去させられるなど、「文化大革命時代に逆戻りしたのか」(香港紙「東方日報」)との批判が出ている。

深センの物質生活ブックバー内部
有名文化人が出版パーティーを開く深センの「物質生活」ブックバーは飲み物を一つ注文すれば何時間でも店内で本を読める文化的雰囲気が人気を博している=深川耕治撮影
 さらには上海万博や広州アジア大会で実施された「刃物類実名登録制」をユニバーシアード期間中に導入することを決定。危険な刀具は身分証による登記が必要で違反者には最高5000元(1元=15円)の罰金を科することになった。

 中国中央テレビの討論番組「先鋒中国」では4月末、同問題を特集。深センの評論家・金心異氏と看板撤去を強制させられた深センの「物質生活」書店バー経営者、曉c氏が登場し、深センのイメージが傷つくことを憂慮した。曉c氏は「深センは現代化した国際都市として期待されている。ユニバーシアードを通して市民も国際都市としてのイメージづくりに呼吸を合わせるべきだ」と話し、当局への直接批判は避けながらも看板強制撤去が市のイメージダウンにつながることを示唆。金心異氏も「深センは公民社会。ユニバーシアード前の様々な騒動を通して公民社会へ着実に足場堅めをすべきだ」と話している。

「物質生活」書店バー経営者、曉c氏
「物質生活」書店バー経営者、曉c氏
 さらに同テレビでは深セン市福田区で統一広告の看板づくりに予算4000万元を投じていることについて不透明な部分が多いことを指摘。看板が強制撤去された「物質生活」書店バーについて著名な設計者が看板デザインを手がけ、「アジアで最も影響力のある中華圏の人文書店」と評されていることを紹介。4月17日に突然、看板撤去を強制的に行った経緯に問題があることを指摘した。

 深セン市は故ケ小平氏による改革開放以来、急速な成長を遂げ、中国経済発展の象徴ともいえる存在。だが、近年は市幹部による汚職事件が頻発し、08年には同市の于幼軍元市長が摘発され、09年には許宗衡市長夫妻(当時)が共産党紀律検査部門に拘束。許宗衡元市長は河南省の鄭州市中級人民法院(地裁)で5月9日、死刑判決を言い渡された。

王栄深セン市党委書記
深セン市トップの王栄深セン市党委書記
 判決によると、許被告は2001年から09年の期間、深セン市党委組織部長や副市長、市長として土地利用計画の変更、内部人事で関連業者や部下に便宜を図り、計3318万元相当の賄賂を受け取っていた。許氏は江沢民派であることから胡錦涛国家主席が江沢民派の粛正のために反腐敗闘争を通して排除しているとの見方もある。

 現在、深セン市トップの王栄深セン市党委書記は胡錦涛国家主席の出身母体である共産主義青年団(共青団)出身で胡錦涛派。許勤深セン市長も同派だ。ユニバーシアードの成功を通して胡錦涛派の昇格を目指し、市政の評価を求める余り、過剰過ぎる政策に中央からも批判が出るほど、動向が注目されている。