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2007年11月22日記 最新中国株情報 WINTRADE


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国学ブームで愛国文化振興どこまで 中国
起業家も聴講、中国語普及も欧米で巻き返し
ソフトパワーに目覚める巨龍


 富国強兵で大国としての復興を目指してきた中国は、近年、国力には軍事力、経済力だけでなく国民の素質、ソフトパワー(中国語で「軟実力」と表現)が永続発展の鍵となるとして伝統文化再評価の動きが高まってきている。(深川耕治、写真も=2007年11月22日記)


 中国中央テレビ(CCTV)が昨年十一月に連続十二回で放送したドキュメンタリー番組「大国の台頭(大国崛起)」(写真右)は中国内で流行語となり、大反響を巻き起こした。過去五百年間に出現した九つの大国の興亡盛衰を従来より客観的に紹介、大国の制度や教育による国民の素質向上、中国独自の文化や伝統を最大限に活用するソフトパワー拡充が長期的な国益になると分析、台頭しようとする中国の歴史的教訓にしようとしたものだ。

 その後、即編としてCCTVは「復興の道」、「和諧の道」を党大会前に制作・放送。注目すべきは、中国政府が「軟実力」を再評価し、新たな国家戦略として着々と組み込み始めていることである。その急先鋒となっているのが、中国語学習熱を世界的に広げる「孔子学院」の欧米や第三世界での設立、少林寺の欧米への進出、中国内の観光名所(敦煌、青蔵鉄道など)を舞台にした欧米との合作映画制作、アニメ振興政策などだ。

北京の中国人民大学にある孔子像=深川耕治撮影
 孔子学院は儒教を布教するのではなく、孔子の名を借りて中国語学習を外国人に啓蒙する中国語学院で、韓国、日本、欧米、アフリカなど三十七の国・地域八十校で開学し、中国の伝統文化も教えている。

 少林拳発祥の地として知られる河南省嵩山の少林寺は仏教寺院でありながら少林拳の普及、仏教の紹介を行うために九五年、ニューヨークに寺を建立して弟子は四百人。演武イベントなど様々な巨額を得るサイドビジネスを展開(中国内だけでも年間で最低二億円の収益)し、米国内にはヒューストンやロサンゼルスなどに寺や分館が設立されている。〇一年にはベルリンにもドイツ少林寺として寺を建立、欧米での文化浸透を目指している。

 また、CCTVで昨年十月から放送されている人気番組「百家講壇」(古典の講義番組)では北京師範大の于丹教授が論語、アモイ大の易中天教授が三国志演義を平易に解説し、国学ブームが巻き起こった。中国の「国学」とは、中国古典や伝統宗教を通じて中国伝統文化の神髄を体得することを目的とした学問体系で、これまで一部の専門家だけで厳格な学術方向として研究されていたものが「百家講壇」を通して一気に大衆化し始めた。

 昨年十一月に出版した于丹著「于丹の『論語』心得」は空前のベストセラーとなり、一月末までで二百二十五万部を突破。三国志演義を平易に解説した易中天著「品三国」も同様で、昨年十二月、出版から一カ月もたたないうちに偽造本が各地で続々と地下出版されるほどの社会現象になっている。

 北京師範大で芸術メディア学院副院長も歴任する于丹氏は、四歳で中国の伝統的学術文化の粋を集めた国学(主な聖典は「千字文」「論語」「大学」「中庸」「孟子」「道徳経」「朱子家訓」「百家姓」「名賢集」など)を学び始め、今では「国学超女」の異名を持つほどの人気ぶり。国内各地だけでなく、香港やマレーシアで開かれる出版記念サイン会会場でも老若男女でびっしり埋まる。

 国学は盲目的な復古主義で現代の若者の価値観に合わないのではないかとの一部反対派の批判に対しては「国学の聖典は数千年間、何度も誤解され、文化大革命でも否定されてきた。理性的な信念となり、内心を覚醒(かくせい)させるライフスタイルとして文芸復興のような役割を果たすことは歓迎すべきことだ」と反論する。

北京大学哲学系で行われている国学講座=深川耕治撮影
 国学ブームが中国で空前の大衆人気となりつつも、意外なところでも評価され始めている。欧米の経営学を学んだ中国人企業家たちがお忍びで一流学者の国学講座を熱心に聴講し始めているからだ。北京大学哲学系が開設した「乾元国学教室」には昨年から社会人教育を目的に「乾元国学教室」という大学院レベルの三年カリキュラム授業を行っている。

 講義内容は国学概説から四書五経、仏教、史学、陽明学、道教、明・清時代の小説精読など多岐にわたる。授業料は年間二万四千元(三十三万六千円)、資料代が二千元(二万八千円)で年間一単位を取得。開講期間は毎月二日間、集中して受講する。受講生の中には企業経営者として国内外を飛び回り、一カ月に二度、空路、北京に戻り、授業に向かうケースもあるほどだ。

 第一期生の大半は企業家だが銀行頭取や政府官僚なども含まれ、北京出身者をはじめ、福建省、安徽省、山東省、新疆ウイグル自治区出身者など国内各地から受講者が集まった。現在は二期三クラスがあり、香港や台湾からも受講生が参加している。一年目は「大学」「中庸」「論語」「孟子」「周易」「道徳経」などを学び、二年目には「史記」、漢唐の仏教、儒教など、三年目は「資治通鑑」、道教、明清代の小説分析などを受講する。

 北京大学哲学系主任の趙敦華教授は乾元国学教室を新設した目的について「国学は全国民が学ぶべき中国伝統文化の神髄であり、中国人が良い中国人になるためのもの。時代に柔軟な国学を創出する」と話す。

中国の書店ではベストセラーになっている于丹著「論語心得」、易中天著「品三国」などが並ぶ=深川耕治撮影
 北京大学哲学系で最年少の教授、王博氏(専門は哲学史、道教思想)は「文化大革命後、国内の民間レベルで国学復興の動きが高まり、特に企業家や公務員の間で古典文化への関心度が非常に高まった。MBA(経営学修士)、EMBA(週末、夜間授業による経営学修士)の経済関係の課程でも国学を取り入れ始め、民営企業では欧米の先進観念以外に国学を企業理念に応用することを強く求めるようになっている」と国学回帰の潮流を説明する。

 国学への高い関心は、一部の企業経営者にとどまらず、西洋化の波の中で中国人の精神的支柱は何かを自問自答する一般の社会人にも広がり始めている。北京大学哲学系と北京乾元国学文化伝播(でんぱ)有限公司は共同で四月二日から国学に関する有料の携帯電話ショートメール配信サービス「乾元国学教室・短信メール版」を開始。受信料金は一日一回の配信で一カ月十元(二十八円)。他の有料配信サービスよりやや高めだが、「一杯の麺(めん)類を食べる料金で一カ月間、国学を学べる手軽さが若者にも受けた。若者世代と旧世代の対話の基礎にもなる」(北京大学の冀建中教授)という。配信内容は聖人君子の格言、名言を乾元国学教室で講義する教授陣十人が分かりやすく解説したもので、全国で購読者が増えている。

 昨年、北京大学以外でも、中国人民大学国学院では国学フォーラムの参加者を国内募集し、福建省福州でも国学講堂(学校)がスタート。民間レベルでも国学のグループ受講を社員に課すケースが増えている。

 中国の国学ブーム、長期的な国家戦略としてソフトパワーの充足を着々と進める動きに対して焦りを見せているのが日本だ。来年の米大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補が大統領に就任するような事態になれば、米国の日本軽視、米中二極化が一気に進み、日本は世界第二の経済大国から転落、東アジアでのステイタスが中国復興でかすんでしまうことになりかねない。

 せめて文化大国として日本語教育の海外拠点拡大を目指そうと外務省が動き始めた。中国では海外の中国語学習者一億人を獲得するために二〇一〇年までに国営の中国語学習センター「孔子学院」を五百カ所開校する目標を立て、すでに約二百校に達している。これに対し、日本は海外で日本の講座を持つ日本語教育拠点はわずか十カ所で、海外での日本語学習者は約三百万人だ。外務省は海外の有名大学で日本語講座を新設し、〇九年までに二百カ所を目指す。

 ソフトパワー重視を新国家戦略とする中国に対し、日本は経済面だけでなく文化面でも先手を打たれており、明確な国家目標のない“漂流国家”に堕してしまわないよう、東アジアでの確固たる地位確保へ文化戦略を練り直す瀬戸際の時期に来ている。

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