台湾関連情報

2011年9月23日記


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与野党票割る宋楚瑜氏出馬 台湾総統選2012
政権批判票の受け皿2つに
野党票も流出、痛み分け

 来年1月14日投開票の台湾総統選と立法委員(国会議員)選のダブル選挙に向け、与党・国民党や最大野党・民進党、出馬準備を進める親民党の総統、副総統候補が出そろった。当初、与野党の二大政党対決と見られていたが、9月20日、国民党と共闘関係にあった親民党の宋楚瑜主席(69)が出馬表明したことで政権批判票の受け皿が二つになり、与野党票や中間層票に異変をもたらす第三勢力となっている。(深川耕治=2011年9月23日記)

中間層は民進党やや有利
第三極誕生なら選挙情勢に異変
次期政権での処遇取引説も 親民党


9月20日、台北市内で出馬表明する親民党の宋楚瑜主席と親民党副総統候補の林瑞雄氏
 宋楚瑜主席は9月20日、総統選に出馬の意向を固め、副総統候補に台湾大学公共衛生学部の林瑞雄教授(72)を指名した。

 台湾の選挙制度上、宋氏が単独で総統選に出馬するには11月5日までに約26万人分の署名が必要。宋氏は林氏との共同記者会見で「100万人の署名が集まらなければ立候補しない」と話し、署名獲得による党勢拡大と資金力増強に意欲をにじませる。

 しかし、2006年12月の台北市長選で大敗し、政界引退を表明していた宋氏が100万人の署名を集めるのは至難の業。あえて高いハードルを課す政治パフォーマンスは「署名数が目標を達せずに立候補辞退となっても、国民党との間でより良い人事処遇条件を勝ち取るための駆け引き」(台湾紙「蘋果日報」)との見方が一般的だ。

 立法院(国会)でわずか現有1議席の親民党は総統選と同日に行われる立法委員選で作家の李敖氏ら20人を立候補予定しており、党勢挽回のためにも署名活動は一挙両得。宋氏が正式立候補できれば、与党・国民党票が割れて野党・民進党に有利になるとの見方から、民進党支持者も署名に協力するとの観測情報も飛び交う。9月22日に始まった署名活動は初日が3〜4万人(親民党本部発表)。署名活動に対して「緑熱藍冷(民進党は熱烈歓迎、国民党は冷ややか)」(台湾紙「聯合報」)とのスタンスだ。

2004年3月の台湾総統選で連戦国民党主席(当時)とコンビを組み、副総統候補として出馬した宋楚瑜親民党主席は投票直前の陳水扁狙撃事件で票読み不正があると抗議
 「台湾公共衛生学の父」と呼ばれる親民党副総統候補の林瑞雄氏は南部の台南市出身。医学界での知名度を生かし、北部での党勢に比べて脆弱な南部での支持拡大を狙っている。米、独の大学で博士号を取得後、長年、海外暮らしが続いたため、家族と共に米国籍を取得していることが指摘され、「米国籍は放棄する」と批判をかわした。

 宋氏は1990年代の李登輝政権時代、行政院新聞局長、台湾省長などを歴任し、国民党内の知識階層からの支持が高く、現在も知名度はある。当時、ばらまき型行政を行ったが、台湾省簡素化で李登輝氏と反目。2000年に国民党を出て無所属で総統選に出馬し、漁夫の利を得た陳水扁氏に僅差で敗れ、直後、本人が党主席となって親民党を結党した。

 2004年の総統選では連戦国民党主席と組み、副総統候補として出馬したが、投票日前日の陳水扁襲撃事件で同情票や浮動票が民進党に流れて再び僅差で落選。06年12月の台北市長選では得票率4%で大敗し、政界引退を表明していた。

民進党の蔡英文党主席(左)と副総統候補となった蘇嘉全氏
 与党・国民党に吸収・合併される形だった親民党は退潮著しく、2008年の馬政権発足後は、重要ポストから外され、馬政権への強い不満がくすぶっていた。

 宋氏出馬で党勢回復を目指す親民党は、与党・国民党と最大野党・民進党のいずれにも不満を抱く有権者から一定の支持を得られ、与野党の勝敗を決する台風の目になりつつある。当初は与党批判票よりも民進党批判票を多く取り込み、民進党に不利との世論調査による観測も出ていたが、徐々に与党不利に転じつつある。

 台湾の各種世論調査では宋氏は15%前後の支持を集めており、台湾誌「遠見」の最新世論調査(15〜19日実施)では国民党の馬英九総統と民進党の蔡英文党主席の2大直接対決の場合、馬氏39.2%、蔡氏38.3%。親民党の宋主席が参選すれば、蔡氏36.0%、馬氏35.8%、宋氏10.0%で蔡氏が馬氏をわずかに上回っている。

 同誌世論調査センターの戴立安主任は「与野党の基本票は国民党55、民進党45だが、総統選で鍵を握るのは無党派の中間層票。来年1月の総統選に向け、中間層の動向は蔡英文氏が6割支持に対して馬英九氏は4割で馬総統が不利な分、激戦となる」と分析する。

 9日、最大野党・民進党の蔡英文党主席(55)は副総統候補として陳水扁前政権時代に内政部長(内相)、行政院農業委員会主任委員(農相)などを歴任した次世代ホープの蘇嘉全同党秘書長(54)を指名。党内リーダーの若返りと世代交代を内外に強く印象付け、若干、支持率を伸ばしている。9月12〜21日の期間、訪米。10月3〜5日には訪日し、米日との関係強化で外交得点を有権者に伝える戦略だ。

 民進党は副総統候補の人選に手間取り、半年難航。その間、支持率が低迷したが、副総統候補の蘇嘉全“効果”で党勢を立て直しつつある。

 一方、与党・国民党は馬英九総統(党主席)(61)が6月に早々と呉敦義行政院長(63)を副総統候補に指名。徹底した組織票を武器に票田の隅々まで漏らさず、立法委員選でも有利に展開する。馬総統の女性票人気で無党派中間層の上積みを見込み、勝機を確実にする大政党型の選挙戦略だ。馬英九政権が対中融和に舵を大きく切り、様々な景気浮揚策を打ち出す中、過去の実績を有権者に訴える与党有利の選挙情勢は変わらないが、宋楚瑜氏の出馬で与野党の票読みは複雑化し、最終盤まで混戦となり、もつれそうだ。