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台湾南部の本土意識、鬼気迫る追い上げ
 台北・高雄市長選
詰め甘すぎた野党・国民党の油断突く
馬英九氏の信任度下がる結果に


 二〇〇八年三月の次期台湾総統選の前哨戦といわれる台北・高雄両市長選は十二月九日、投開票が行われ、台北市長選は最大野党・中国国民党の●龍斌(かく・りゅうひん)氏(54)=元環境保護署長(環境相)=が、高雄市長選は大接戦の末に民進党の陳菊氏(56)=元労工委員会主任委員(労相)=がそれぞれ初当選した。

 十一月初旬に陳水扁総統夫人が総統府機密費流用で起訴された一方、最大野党・国民党の馬英九党主席(台北市長)にも市長経費の流用疑惑が浮上し、選挙戦は終盤、双方の中傷合戦がヒートアップ。結果的に与野党とも一勝一敗で四年前と同じ勢力図のままだが、与党・民進党は両市長選での全敗という最悪の事態を逃れ、陳総統もぎりぎりの「信任」を得、逆に馬英九国民党主席は党内評価が下がった。

 台北市長選で惨敗した親民党の宋楚瑜主席は開票途中に敗北宣言し、政界引退を発表。少数政党の親民党、台湾団結連盟(台連)の勢力が台北市議会、高雄市議会でも風前の灯火となり、来年末の立法委員(国会議員)選挙でさらに淘汰されることが予想される。

 両選挙は終盤、与党・民進党は陳水扁総統周辺の汚職問題から危機感を高めて急追し、国民党との差を縮め、とくに高雄市長選では予想以上の大接戦を制した政治的意味は大きい。

 台湾第二の都市、南部の高雄では投票前日、国民党の黄俊英陣営の顔色が深刻となり、選対本部の事務局長は陳菊陣営の鬼気迫る急追に顔面蒼白だったのが印象的だった。各陣営の支持者集会を現場取材したが、国民党は四年前の選挙よりも、選挙パフォーマンスは向上した。まるで民進党の手法をそっくり取り入れたような演出だったが、実質的な集票に必要なローラー作戦での詰めの甘さ、選挙民の細かい投票心理を見通す力や追い込みでの危機意識欠如が高雄奪還を逸した最大の敗因だろう。

 台湾南部は本省人(戦前からの台湾在住者とその子孫)が多く、台湾本土派の中でも独立志向の強い民進党の地盤。総統夫人の起訴で大きく水をあけられた民進党は背水の陣を敷き、高雄の選挙民の細かい心理をくすぐる工夫を随所に取り入れ、最終盤で国民党を猛追。わずか千百十四票差で辛勝した。

 高雄以上に台北での謝長廷氏の健闘ぶりは党内での評価を高めそうだ。高雄市長ポストを譲り、到底勝機がない台北市長選に出馬し、予想以上の票数を集めたことで〇八年三月の次期総統選で民進党の有力候補に一歩近づいた意味合いが強い。民進党内では、蘇貞昌行政院長(首相)が総統候補、謝氏が副総統候補になるか、それとも逆か、「四天皇」(蘇貞昌行政院長、謝長廷前行政院長、游錫■(埜の木を方に)民進党主席、呂秀蓮副総統)と呼ばれる四人の有力候補をめぐり、来年春まで党内で駆け引きが続きそうだ。(台北・深川耕治)

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