台湾企画記事
2004年12月8日記

与党、過半数へぎりぎりの攻防 台湾立法院選
苦戦の台連、追い上げがカギ
野党連合は足並みに乱れ ねじれ現象解消なるか

 台湾立法院(国会、二百二十五議席)選挙は十一日の投票日まで二日に迫り、与野党が議席の過半数奪取に向け熾烈な攻防を続けている。陳水扁総統率いる民進党は独立志向を強める集票効果で着実な議席増を見込めるものの単独過半数は困難。連立を組む台湾団結連盟(台連)の議席増次第で過半数確保の明暗を分ける。現有議席で多数派を占める野党の国民党と親民党、新党は選挙協力の足並みが乱れ、議席減をどこまで食い止めるかの闘いだ。(04年12月8日記、台北・深川耕治、写真も)


 今回の立法院選は三月の総統選の“延長戦”とも言われ、与野党による過半数争奪戦だ。与党・民進党は二〇〇〇年の陳水扁政権発足から続く少数与党による「ねじれ現象」の脱却を目指し、台連との与党連合で過半数(百十三議席)確保に総力戦で挑んでいる。

 「選挙に強い民進党は九十六議席以上、台連は十七議席以上取れば与党連合の過半数獲得が達成できる。民進党は達成ラインに入っているが、台連は最後の追い上げ次第」と民進党関係者は話す。

 序盤戦では、総統選での再選勝利の勢いに乗った民進党と台連が〇八年の新憲法施行を訴えることで「台湾人意識」を高揚させて票に直結させる攻勢が目立つ一方、立法院での最多勢力を維持したい野党連合の国民党と親民党は、米国からの武器供与や台湾史中心の教育改革をめぐり、与党批判を繰り返すのみで「守り」の選挙となった。

 ただ、台連は候補者の知名度がなく、国民党本土派の票を奪うだけの力がないために伸び悩み、予想外の苦戦に直面した。台連は民進党との票の割り当て協力を要請したが、予想以上に支持率が低い台連との選挙協力に期待が持てないと判断した民進党は、高雄市など一部の選挙区のみで票の配分を調整し、大半の選挙区では選挙協力を諦めたほどだ。

 台連よりも独立色を鮮明に出した方が票を得やすいと判断した民進党は、陳水扁総統自ら新憲法制定をはじめ、「国章」変更、「台湾」の名称での国連加盟などを次々と打ち出すことで台連の票まで奪うマイナス要因が出て、台連内部で民進党への反発が高まった。

 起死回生を狙う台連は五日、台北市内で約十五万人参加のデモ集会を行い、選挙最終盤へ台湾本土派の票掘り下げに力を注いで、「李登輝効果」が奏功した。

 同集会では李登輝前総統が演説し、「現在の国名、憲法は台湾を縛り付けて死なせてしまっている。これが台湾を正常にしていない原因であり、台湾建国の前途のために死んだ状態から解き放たねばならない」と台湾建国のための新憲法制定の意義を語り、「台連は明確な主張のある政党であり、民進党のお飾りではない。与党を監督することで人民の希望を完成できる」と民進党との違いも強調した。

 同集会の効果は大きく、民進党の独自調査では台連が三議席増、民進党が三議席減になるだけの地殻変動をもたらし、台連の追い上げは先回の立法院選と同様、予想以上の健闘を見せている。

 一方、国民党も五日、「団結、護国、台湾救済」とのデモ集会を台北市内で行い、同デモ行進には同党以外に宋楚瑜党主席率いる親民党や新党の支持者らも参加し、野党大連合の結束力を有権者にアピール。国民党の連戦主席は「与党は国家を消滅させて台湾独立の新憲法制定や歴史の改ざんを通じて台湾国を正式な国名にしようとたくらんでいるが、名字を変えて運命を変えようとするのは笑止」と酷評し、「野党の議席過半数維持こそ国家主権の護持になる」と話した。

 また、親民党の宋楚瑜党主席は「野党が議席過半数を維持しなければ台湾は戦争に向かう。急進的な独立を主張する憲法制定を阻止し、台湾の平和安定を保とう」と訴えている。

 野党連合は配票(票の分配)で協力体制が取れているかに見えたが、最終盤になって破局。国民党は高雄県や屏東県など十県市で「棄保」(勝てない候補に投票するより意見の近い勝てる候補に投票)を徹底化し、安全策を優先するあまり、親民党や新党候補者への配票はしないことを決定した。この動きに親民党や新党の立法委員候補らから抗議の声が上がり、党利優先の選択が野党では国民党だけに有利に働くとの見方が強まっている。

 とくに国民党から分裂した親民党は宋楚瑜党主席の指導力だけが全面に出て、三月の総統選で野党連合を組んだ際も国民党の窓際的存在だった。唯一の同党所属の徐慶元・台東県長(県知事)が先月二十日、民進党の立法委員候補支持を打ち出し、離党して寝返るなど、宋楚瑜人気に陰りが見えており、苦戦を強いられている。野党が敗北した場合、選挙後、二大野党が存亡をかけて合併するかどうかにも注目が集まっている。

【台湾の立法院選】今選挙には合計四百九十六人が立候補。一院制議会である立法院(国会)の二百二十五の全議席を改選。百六十八議席と先住民枠八議席の選挙区のほか、海外在住の華僑枠八議席を含む四十九議席は比例代表制。立法委員の任期は来年二月からの三年間。