台湾関連情報

2012年1月15日記


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大陸客に民主化萌芽を喚起 台湾ダブル選挙
中国にない大接戦や混戦
お祭り気分、新鮮さ倍増

 
1月14日投開票された台湾総統選挙は、史上初となる立法委員(国会議員)選挙とのダブル選挙となり、中国でも大きな関心を持たれた。08年、対中融和に舵を取る国民党が政権を奪還して中国人団体観光客が受け入れられて以来、直接投票制で指導者を決める民主選挙の現場を見聞きする中国人にとっては厳しいメディア統制で知ることができなかった台湾の政治風土を直接体感する好機となり、民主化の必要性を萌芽させるきっかけにもなっている。(深川耕治=2012年1月15日記)


馬英九総統が再選 三通推進で政治改革に光も


支持者に握手で答える馬英九総統。南部でも支持を拡大させたが、中国人観光客に台湾の民主的選挙を体感させて政治改革を萌芽させるきっかけにもなっている
 選挙戦中盤の昨年11月24日。辛亥革命百周年で同日、国民党の建党117周年を記念する式典が台北市内の国父記念館で開かれ、国父・孫文の銅像前で式典を終えた馬英九総統に「小馬●(歌のヘンの部分)加油(馬英九、がんばれ)」「馬英九当選」と覚えたての台湾語で繰り返し大声で呼びかけたのは国父記念館を訪れて偶然現場に巡り合わせた中国人観光客たちだった。

 史上初となるダブル選挙となったことで、台湾全土でカラフルなのぼりや選挙ポスター、ビルの壁面に巨大な選挙広告が乱立。爆竹を鳴らしながら防弾ガラス入りの街宣カーで選挙区を回る選挙活動を目の当たりにした中国人旅行者にとって台湾の選挙は「春節(旧正月)以来のお祭り騒ぎ」(重慶からの観光客)であり、一党独裁の政治統制下で生まれ育った政権選択に自由がない中国人には「中国にはない各政党の口水戦(舌戦)は政治で言いたいことを言えてきわめて新鮮で健全な政治感覚」(雲南省昆明の個人観光客)に映る。

 中国との貿易・経済交流の改善を進めた国民党政権は08年夏、中国人の団体観光を解禁して以来、経済協力枠組み協定(ECFA)の締結などで対中関係を改善させ、各地の観光名所に中国人観光客が押し寄せ、中国人が直接、台湾の政治にも触れる機会が増えた。

 昨年6月28日、中国人の台湾への個人旅行が解禁され、「許可されない行為」として選挙活動や政治的公共活動への参加、テレビ番組での意見表明などが明記されているが、選挙活動の見学はグレーゾーン。実際は黙認されている。そのため、実際は台湾の中国人観光客ツアーを扱う旅行会社では、立法委員選挙や各政党の選挙集会に案内するケースが増え、中国人観光客に好評だ。今回の選挙のように与野党が伯仲し、与党票を割る親民党が票の行方を左右する混戦や大接戦の民主的な選挙は、一党独裁の中国では皆無。それだけに政治的関心度は高い。

 中国旅遊研究院などが行った2011年度第3季の中国人海外旅行客調査によると、中国人の海外旅行人気国・地域はトップの香港、2位・オーストラリア、3位・韓国に続き、マレーシア、米国、日本、タイ、台湾、シンガポール、ロシアの順となっている。

 台湾への個人旅行は、以前より査証手続きが簡易化され、8位に浮上。昨年11〜12月だけの中国本土から台湾への観光客は個人・団体を合わせ、のべ約27万人で前年同期比4割増。昨年は1〜11月末時点までで過去最多の約160万人となり、直航便の増便に伴い、さらに人気度が増しそうだ。

 先月3日の総統選挙に立候補した3氏(馬英九氏、蔡英文氏、宋楚瑜氏)のテレビ討論は、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」を通じて中国内のインターネット上に相次ぎ転載され、断片的な情報ながら大きな反響を及ぼした。

 討論会については「台湾人が1票を投じて指導者を選べるのはうらやましい」「政治改革が進まない中国でこんな討論会が開かれるのか」「3人とも主張がわかりやすい」など賞賛する書き込みが多く、とりわけ「馬英九よ、祖国統一してくれ」との書き込みもあり、中国人観光客を大幅に受け入れた馬英九総統を支持するものが圧倒的だ。

 同討論会の断片情報は反響が大きく、先月7日、中国福建省アモイから発泡スチロールで作ったいかだで台湾・金門島に着いて逮捕された新彊ウイグル自治区の男性は「台湾の民主主義を体感したかった」と供述しているほどだ。

 香港各紙によると、1月14日の台湾ダブル選挙の投票のため、台湾入りする中国大陸など海外在住の台商(台湾人ビジネスマン)10〜15万人を見越し、中国国務院台湾弁公室では5〜14日の選挙期間、台商の投票帰省を優先して中国人観光客数を制限。中国人観光客が激減した。

 中国人観光客の人気スポットである南投県の日月潭は6割減。地元旅行社は「通常1日3000〜5000人の中国人観光客が訪れるが、最近は1000人に満たない」と話し、中国人に人気の阿里山登山鉄道も列車空席が目立ち、「馬総統が再選しない限り、商売上がったり」とぼやいている。一方で、行列への割り込みなど、中国人観光客のマナーの悪さなど、影の部分もつきまとう。

 2日、台湾では中国人観光客向けに健康診断や美容整形が受けられる医療観光が解禁された。とくに若い女性のプチ整形ツアーは人気の的。第一陣は2月に訪台予定で中間階層や富裕層で医療観光をメーンとして訪問することが可能となり、ビジネスチャンスは大きい。

 三通(中台間の通信、通商、通航の直接往来)の解禁で中台間の直航便が増え、昨年末までに188便が開設され、さらに中国中西部からの直航便が強化される見込み。

 ダブル選挙で選挙当日までの約3ヶ月間に中国人観光客が指導者を選ぶ民主的選挙活動を間近に見る機会が増えたことは、微博などの間接情報とは違う中国人の民主選挙への意識を芽生えさせる大きなきっかけとなり、今後も定期的な大型選挙が行われる度に中国民衆へ浸透する政治改革への影響力は着実に増大していくことになるだろう。