台湾企画記事
2004年10月12日記

懸念される陳政権の対中政策 台湾
選挙を意識、中国側は対話姿勢なし
 10月10日、台湾の陳水扁総統は国慶祝賀大会で一九九二年の両岸(中台)事務担当者による「一つの中国」各自解釈の合意を基礎とした新たな対話再開を中国側に呼びかけた。五年前の政権発足以来、中国当局は対話のテーブルにつくことすらなく、中台関係は冷え込むばかり。陳総統の奇策は十二月の立法委員選挙を意識した有権者向けのものか、「言葉の遊び」か。中国側の態度に変化はなく、民進党政権の対中政策は限界に直面している。(04年10月12日、台北で、深川耕治、写真も)

 台湾は李登輝前政権を含む中国国民党政権時代、外交空間の生き残りをかけて中国脅威論を表向き、振りかざしながらも、非公式には対中交渉のパイプを持ち続け、対中貿易では戒急用忍(急がず忍耐強く)政策で現状維持、中台交流の窓口機関同士の対話は一進一退ながら継続してきた。国共合作の時期もあり、中国国民党と中国共産党は表も裏も熟知し合った関係だ。

 だが、〇〇年五月、陳水扁政権が発足し、対中関係の実務経験のない民進党が与党となったことで情況が一変。中国大陸に進出していた陳総統支持派の企業は「台湾独立派」とレッテルを貼られ、三通(中台間の通信、通商、通航の直接往来)実現は遠のいた。中台の窓口機関同士の協議は頓挫し、陳政権が二期目に入っても、中台対話の冷え込みは当面続くとみられる。

 陳政権は選挙のたびに対中柔軟策を打ち出して中国大陸進出に積極的な財界や一般有権者の支持を取り込み、中国側へ「最大の誠意」を示す姿勢を取りながら、無視され続けることで中国への有権者の反感を高め、選挙を勝ち続けてきた。今回も十二月十一日の立法委員(国会議員に相当、定数二二五)選挙で民進党、台湾団結連盟を合わせて「半数プラス十議席は獲得する見通し」(民進党関係者)とされ、陳総統の「香港精神」発言はあくまで対内的な選挙用との見方が強い。

 陳総統は政権発足以来、「九二年の香港会談は『一つの中国』各自解釈を認めたものではない。『一つの中国』は受け入れられない」と繰り返し主張してきており、ここに来て、突然、前言を翻す演説に野党各党の厳しい批判が噴出。李登輝元総統も「香港会談は『一つの中国』各自解釈を認めたものではない。(陳総統が発言した)中華民国は台湾であり、台湾は中華民国という表現は自己欺瞞」と私人の立場で酷評した(写真)
 民進党内からは「春節(旧正月)期間だけだった中台チャーター便の期間拡大につながる」と高い評価がある一方、「陳総統の香港会談発言は言葉の遊びであり、個人的にはまったく評価しない」(黄昭堂総統府国策顧問)との身内の冷たい評価も根強い。

 中国側は今回の陳総統の対話再開発言に無反応を決め込んでいるが、中国英字紙「チャイナ・デーリー」(十一日付)は「軍事力増強で台湾独立を決心しているのに、言葉遊びに過ぎない」との中国の台湾専門家の発言を紹介、そっぽを向かれたままだ。

 陳総統は大きな選挙前に中国への善意を示す対中対話再開や超党派組織の新設を呼びかけながら、結果的に挫折すれば中国や野党への責任転嫁を繰り返し、総統府と外交部(外務省)の食い違った二重外交が、一貫性のない対中政策でもほころびを見せており、外交に弱い民進党政権の危うさが懸念されている。