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2012年6月10日記


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再評価活動に真逆の対応 天安門事件23周年で中国当局
貴州省ではデモ黙認 湖南省では民主活動家が不審死


 
中国の民主化運動を武力弾圧した1989年の天安門事件23周年を迎えた4日、香港では大規模な追悼キャンドル集会が行われ、台湾でも事件の犠牲者をしのんだ。事件記念日に合わせ、中国各地でも毎年、事件の再評価を求める活動が行われようとするが当局が封殺。5月末、貴州省貴陽市では事件再評価を求めるデモが当局から妨害されず、2日連続で行われたが、湖南省では民主運動家が不審死する事件が波紋を広げている。(深川耕治=2012年6月10日記)

絶望と希望渦巻く政治的思惑
政治圧力さらに強まる傾向に


5月27・28日、中国貴州省貴陽市内で行われた天安門事件再評価を求めるデモ。主催した糜崇驃氏(中央)が良心的な政治犯、陳西氏の釈放を訴えた=中国のネット画像より
 5月27、28日の両日、中国貴州省貴陽市鬧市区内の人民広場には民主運動家で「人権ショーウインドウ」発起人の糜崇驃氏(73)を中心とする20人余が「天安門事件23周年 殺人者を追求調査し、政治迫害を停止せよ」「良心の政治犯、陳西氏の釈放を強烈に要求する」などの横断幕を持ち、「民主万歳」「打倒独裁専制」などのシュプレヒコールを上げながら約3時間ずつデモ集会を行った。

 地元公安当局はデモを遠巻きから監視したものの、阻止したり、途中で参加者を拘束することなく、2日間の天安門事件再評価を訴えるデモは無事に終わっている。現場は最多で数百人規模の群衆が取り囲んで見ていた。動画サイトのユーチューブにアップされた同デモの動画では周囲を取り囲む人々は大半が中高年で若年層は少ない。

中国政府への民主化を求める〇八憲章に署名した陳西(本名・陳有才)氏はいまだに投獄されている
 国民党の将軍・糜藕池氏の息子だった糜崇驃氏は天安門事件当時、貴州省から北京に赴き、ハンガーストライキをする学生らを支持。同事件の軍事虐殺をつぶさに見てきた。糜氏は「中国共産党の民衆への長期的な洗脳工作の結果、事件の再評価を求める声が少なく、若者は現状に甘んじている」と危機感を募らせている。

 同デモでは移動式DVDを使って天安門事件の当時の映像を紹介し、良心的な政治犯で中国政府への民主化を求める〇八憲章に署名した陳西(本名・陳有才)氏の釈放を求めることを当局に要求。陳西氏は天安門事件で3年間投獄された後、再び1995年に同事件の再評価を求める運動を行ったことで国家転覆煽動罪で10年間の実刑判決を受け、いまだに投獄されている。デモを主催した糜崇驃氏は各香港メディアに対して「奇怪なのは地元の警官が私を拘束しなかったことだ」と語っている。

 糜氏は定年退職後、「人権ショーウインドウ」を発足し、2010年5月末から貴陽市人民広場で不当に投獄されている中国の人権活動家らに対する支援カンパ活動を展開。天安門事件の再評価を求める組織的活動を開始し、即刻、当局から拘束されている。昨年も5月29日から6月1日までの期間、当局から自宅軟禁を強いられていた。

6月6日、病室で死亡している李旺陽氏(右)を抱いて泣き崩れる李氏の妹、李旺玲氏=李旺玲氏提供
 しかし、今年はデモを二日間にわたって行っても当局からの嫌がらせや妨害はなく、内外メディアへの電話取材に対しても自由に受けることができた。背景には海外から集まる支援金を当局が巻き上げる目的があるのではないかとの見方もある。

 当局の奇怪な対応について糜氏は「薄煕来失脚事件や陳光誠事件の後、党指導部の人権問題に対する対応路線が変わってきた」「(薄煕来事件で)周永康政治局常務委員の権力が削がれ、政法系統の権力バランスがうまく機能しなくなったのではないか」と分析する。国内の民主運動家はすでに党内の権力闘争劇を熟知しているのだ。

 しかし、その一方、福建省では5月30日午前、人権活動家の範燕瓊氏ら15人の上申者が福建省延平区裁判所前で天安門事件の再評価を求める横断幕を掲げながら裁判所前から範氏の自宅までデモ行進。地元警官が家の周囲を取り囲み、活動状況を調べるために家宅捜索している。

 
6月2日、香港有線テレビで放送された李旺陽氏へのインタビュー映像。5月22日に撮影された際、天安門事件の再評価を熱く語っていた=香港有線テレビのテレビ画像より
 また、天安門事件の際、中国湖南省で民主化運動を指導した李旺陽氏が6日、湖南省邵陽市内の病院で不審死した。李氏は天安門事件後に反革命組織罪で禁錮13年を言い渡されて2001年に出所した直後、国家転覆扇動罪で再逮捕されて有罪となり、10年間服役。「六四鉄漢(天安門事件の硬骨漢)」と呼ばれるほど信念を貫く人だった。

 昨年5月に出獄した際は服役中に受けた虐待でほとんど聴力と視力を失い、歩行も困難な状態だったが、香港有線テレビで2日、5月22日にインタビューした内容が放送され、「わが国が民主国家として多党制を導入するためならば首を切り落とされてもかまわない」と天安門事件の再評価を力強く語る健在ぶりを示していた。

 ところが、李氏の妹夫婦が6日朝、病室の窓枠に白いひもをかけて首に巻き付けて死亡している姿を発見。地元公安当局は自殺と断定して妹夫婦を拘束し、遺族の了解なく遺体を運び出した。死亡発見時、両足は地面についている状態で偽装自殺との疑いが強まっており、香港の民主化団体である香港市民愛国民主運動支援連合会(支連会)は中国当局に真相解明を要求。7月1日、香港返還15周年に合わせて香港を公式訪問する胡錦濤国家主席に対し、李旺陽氏の死因究明を要求するデモを準備している。

 中国で胡錦涛政権が発足して10年。絶望と希望渦巻く政治的思惑の中、党内で政治改革の動きが盛り上がれば、貴州省でのデモ黙認や三月に同事件で失脚した趙紫陽総書記(当時)を追憶するサイトに自由な書き込みが一時認められるなど、天安門事件の再評価や趙氏の名誉回復につながる期待もわずかにある一方で、総体的には再評価への新たな政治的圧力がさらに高まっている。