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2010年3月19日記 最新中国株情報 WINTRADE


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偉人の観光商標めぐり争奪戦 中国
李白、老子、墨子、諸葛孔明…

出身地論争、町おこしで激化

 
商標法の抜け穴を悪用した商標登録やブランド名の不正使用、国内外の模倣品問題が目立つ中国では、商標法の一部改正で海外の名前を盗用登録できにくくなる一方、中国史上の偉人の名前を地域振興のために観光商標登録する動きが各地で新たに問題化している。偉人の出身地や縁のある地が複数ある場合、地域振興に直結する新たな観光資源として争奪戦を繰り広げている。(深川耕治=2010年3月19日記)

観光振興に直結、地元ピリピリ
巨大銅像を建立、集客皮算用


河南省洛陽楽川県の老君山に建立された高さ59メートルの巨大な老子像=中国のウェブサイト「洛陽網」より
 3月15日、河南省洛陽市郊外の楽川県にある老君山には中国一の高さを誇る巨大な老子の銅像建立の大詰め作業が行われ、官営メディアの現地取材で全貌が明らかになった。老子の銅像は全長59メートル、重量360トンの青銅製。楽川県政府が5億元(約65億円)を投じて老君山の風光明媚な風景区に建立工事し、4月には盛大に除幕式を行う予定だ。

 道教の開祖に崇められた老子(姓は李、名は耳)は生没年や出生、存在自体に謎が多い。史記の記述によると、老子は春秋時代(紀元前5世紀ごろ)の思想家で楚の国の苦県(現在の河南省周口市鹿邑県)生まれとの説が有力。周の王室の書庫記録官だったが、国の衰亡を見極めて立ち去り、「老子(道徳経)」を書き残したとされる。

 老子の巨大銅像が建立中の河南省楽川県にある老君山は老子が記録官を辞めて隠遁修練した場所と伝えられ、後世、道教の聖地と讃えられている。銅像の足下には有名な書道家81人が道徳経5000余字を刻んだ壁文字を製作。銅像や壁文字は国内外の老子ファンなど新たな観光客訪問による収益が見込める皮算用だけでなく、老子の正統な聖地であることを内外に広く誇示する思惑が働いている。

 中国共産党は文化大革命以来、神仏の偶像化建設推進を長年禁じてきたが、毛沢東の銅像が各地に増え、ケ小平の銅像も建設される一方、江沢民前国家主席が仏教を信奉していたことで徐々に解禁され始めた。

河南省洛陽楽川県の老君山に建立された高さ59メートルの巨大な老子像
 地方の党幹部の一部にはこの動きに強く反発するケースもあるが、地域振興策が優先され、江氏の出身地である江蘇省無錫には8億元(1元=13円)を投じた高さ88メートルの仏像が建立され、海南省三亜には米国の自由の女神像より15メートル高い全長108メートルの海上観音像を建立。河南省平頂山には世界一の高さを誇る全長208メートルの大仏が建てられ、地元の観光スポットの目玉となり、観光振興に大きく貢献している。

 老子の巨大銅像が建立されたのは観光振興だけが目的ではない。老子の出生地は、河南省周口市鹿邑県と安徽省渦陽県の二つの説があり、鹿邑県説がかなり有力だ。

 渦陽県政府は史書に老子の故郷について「谷水の流れが集まる渦河付近」と表記していることが渦陽県出生説の根拠と主張。2007年には「老子文化節」を地元で挙行し、昨年末には老子博物館を竣工する力の入れようだった。

 これに対し、昨年、河南省霊宝市観光区管理処は「老子」の商標登録を申請。安徽省渦陽県商工局は「老子の出生地や生前の活動拠点は史実から見て安徽省」と猛反発した。渦陽県商工局は昨年12月、国家工商総局商標局に異議申し立てを行い、商標局は異議申し立てに正当な理由があると判断。登録手続きはできないとの裁定を下した。

 中国の商標法は出願から審査、公告(異議申し立て期間)、正式登録まで3年以上がかかる。このケースの場合、公告期間に異議申し立てをして認められた例だ。

 老子を観光ブランドにしたい両地域は町おこしでの文化資源の争奪戦を展開し、老子の巨大銅像建立もその“延長戦”といえる。

李白に対して「先生はここで生まれ育ちました」(四川省江油)、「ここで定住されたことがあります」(湖北省安陸)と引っ張り合う漫画=上海紙「解放日報」より
 中国史上の偉人をめぐる観光商標登録の争奪戦は他にも数多くある。

 唐代の詩人・李白、墨子、中国古代四大美女の1人である西施、諸葛孔明、花木蘭など出自が曖昧な偉人に関してはとくにその名を冠に使った観光商標の争奪戦は激しい。

 唐代の詩人、李白は出自や出生地や長期滞在地が諸説あり、常に論争の火種。史書によって出生地が山東とする説や西域に接する隴西郡成紀県(現在の甘粛省天水市秦安県)とする説があり、幼少期には父に連れられて綿州昌隆県青蓮郷(現在の四川省江油市青蓮鎮)に移り住んだとの説が有力だが、その後も中国各地へ放浪の旅に出て謎が多い。

 特に李白が幼少期を過ごしたとされる四川省江油市と長期滞在したとされる湖北省安陸市が「李白の故郷はわが町」と宣伝合戦を展開し、激しい争奪戦へエスカレート。

中国戦国時代の思想家・墨子は河南省魯山の出生とされるが、中国中央テレビ(CCTV)は山東省滕州が出生地と錯覚させるCMを放送したと批判する漫画=中国紙「河南商報」より
 江油市は2003年、国内都市で初めて観光商標として「李白の故郷」を登録した。だが、安陸市は昨年8月、中国中央テレビ(CCTV4)の観光CMに「李白の故郷、銀杏の街」とキャッチフレーズを使って連日宣伝し、江油市は「商標権の侵害だ」と主張して国家工商総局に放送中止を求め、CMは一時打ち切りとなった。

 しかし、国家工商総局は「李白が安陸市に長期居住していたので商標法第49条を正当に遵守した行為であり、問題ない」と判断し、CMによる宣伝を再開許可。江油市側は同局の判断を無効として司法で争う構えを崩していない。

 中国史上の偉人の商標登録争奪戦について成都大学観光文化産業学院の諸丹学院長は「大都市と違い、僻地の場合、突出した観光資源がなければ偉人ブランドを開発することが観光による経済振興に手っ取り早いと考える地方政府が多い。だが、低コストで効果が上がると安易に考えても実際はそれだけでうまく行くはずはない」と冷ややかだ。

 かつて文化大革命(1966〜1976年)で国宝級の文物、仏像、歴史上の偉人像を徹底的に破壊し、孔子を始めとする偉人の墳墓を掘り起こして中国古来の伝統的な思想や文化遺産を完全否定した中国。年内にも日本を抜いて国内総生産(GDP)で「世界第二位の経済大国」に躍り出ようとする同国は、内陸部の経済振興のために歴史上の偉人を商標ブランド化して地域振興にフル活用しようとするしたたかな地方政府のせめぎ合いが展開される“新たな文革時代”を迎えている。


 




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