台湾関連情報

2012年10月11日記


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台湾野党への統一工作巧妙に
謝長廷氏の訪中で新パイプ
個人的訪問、“貴賓”扱い
 台湾の最大野党・民進党の謝長廷・元行政院長(首相)が4日から5日間、中国を訪問した。行政院長まで経験した同党の重量級古参幹部が訪中するのは初めてで、アモイでは地元政府要人が出迎え、北京では王毅・台湾事務弁公室主任(閣僚級)や戴秉国国務委員(副首相級)らと会談し、厚遇された。民進党は政権奪還に向け、対中政策の再構築が最重要課題だが、謝氏の訪中で党内の基本路線は変わらず、両党にとってパイプづくりによる布石となった形だ。(深川耕治=2012年1月15日記)


民進党の対中政策なお不透明
厚遇で揺さ振り、不協和音も

 10月7日、戴秉国国務委員との会談後、「この人と顔が違っていた」とユーモアたっぷりに賈慶林全国政治協商会議主席の画像をアイフォンで記者団に見せる謝長廷氏
 謝氏は絶妙のタイミングで訪中した。11月8日、5年に1度の最高指導部人事が発表される中国共産党大会の前、尖閣諸島の領有権をめぐる反日暴動が収まった時期だっただけに京都大学大学院への留学経験のある親日派で台湾独立派でもある民進党の重鎮が訪中するとなれば、中国側は台湾統一工作のため、引退前の高序列にある党幹部が接触しやすい5年に1度の限られた時期だからだ。

 表向きは国際バーテンダー協会の招きに応じ、同協会が北京で主催するカクテルコンテストを観戦するため、民間団体「台湾維新基金会」理事長の肩書きで訪中した。訪中前、謝氏は記者会見で「あくまで個人的な訪中」としながらも「民進党と中国共産党の間で欠落している相互信頼関係を培うための突破口にしたい」と二党間のパイプづくりに意欲的だった。

 10月4日、游芳枝夫人や民進党の李応元氏ら民進党立法委員らと共に福建省のアモイ空港に到着した謝氏はアモイ副市長らが空港で歓迎。福建省●(さんずいに章)州(しょうしゅう)にある祖先の地に墓参し、5日には立法委員時代に訪れたアモイ大学を19年ぶりに訪問し、「両岸関係の発展は求同存異(違いを認め合い、共通点を見出す)のもと、違いを超えていく必要がある」と述べ、教育や文化交流の重要性を強調した。

 10月6日、北京で中国国務院の王毅・台湾事務弁公室主任(閣僚級)と食事を交えて約3時間会談。謝氏は台湾与党・国民党と中国共産党が両岸交流の前提としている「92年コンセンサス」(1つの中国、各自表明)を「民進党は受け入れることはできない」としながらも「中台は『1つの中国』を明記する双方の憲法を基礎に対話が可能だ」との持論を展開。

 王主任は8月、台湾の親日派分断を狙い、北京での学術会議で尖閣諸島問題について「両岸同胞は協力して外部勢力に対抗しよう」「(民進党関係者に)中国の発展や進歩、対台湾政策を具体的に理解してもらう環境を整える用意がある」と呼びかけていた。

 北京の798芸術区を訪問する謝長廷氏夫婦
 10月7日には戴秉国国務委員(副首相級)と約1時間会談し、謝氏は「主権と無関係な国際組織などで台湾の国際社会での活動空間拡大を中国が理解して許容すべきだ」との考えを伝えた。これに対し、戴氏は「中国は国連加盟前、国際空間で国民党の圧力を受けた。何事もじっくり時間をかけて処理していく必要がある」と返答している。

 戴氏は胡錦濤国家主席をトップとする共産党中央対台湾工作指導グループの秘書長。外交を担当する国務委員で中国共産党の台湾担当としては胡錦濤氏、賈慶林氏に次ぐナンバー3のポストにある。台湾与党・国民党が中国共産党指導部と日常交流を続けていることに比べ、パイプの格差に違いがあるが、中国共産党が台湾独立志向の強い民進党とのパイプをつくることでの統一工作へのメリットは大きいととらえている。

 10月7日、中国当局が事前予告なくセッティングした中国要人との会談を終えた謝氏は、記者団が「賈慶林氏(党政治局常務委員)を知っているか(今回、直接会談できたかという意味)」との質問に自分のアイフォンを取り出して賈慶林氏の画像を見せ、「写真では知っているが、顔を見て初めて違う人物(戴秉国氏)とわかった(出てこなかった)。彼らは(台湾政治を)よく研究しているが、われわれは彼らより勉強不足だ」とユーモアたっぷりに語り、賈氏との会談実現を期待していたことを示唆した。

アモイ大学台湾研究院での座談会に臨む謝長廷氏。18年前の立法委員時代以来の福建省アモイ訪問となった
 10月2日、台湾立法院(国会に相当)では対中関係を取り仕切る行政院(内閣)の王郁g大陸委員会主任委員(閣僚)が民進党の立法委員(国会議員に相当)から中国共産党政治局常務委員9人の写真を掲げて名前を質問された際、胡錦涛国家主席と習近平国家副主席しか答えることができず、賈慶林氏すら知らなかったことが露見した与党・国民党への揶揄との意味もある。

 謝氏は民進党の対中政策諮問機関「中国事務委員会」のトップに就任することが内定しており、党を代表する中国との交渉窓口となる見込みだが、党内では対中政策が一本化しておらず、不協和音も多い。

 李登輝元総統は5日、謝氏の訪中について「台湾に戻って訪中意義を明示すべきだ。パフォーマンスで選挙の皮算用をするような政治思考なら台湾にとってマイナスだ」と述べている。

 国民党は野党時代だった00年〜08年の時期に中国共産党との関係を改善し、トップ会談まで実現。政権奪還して蜜月時代となっている。民進党も08年の総統選の敗北原因の一つに対中政策の曖昧さがあると判断しており、野党である現段階で中国とのパイプを築き、両党の新たなコンセンサスを得て2016年の総統選を準備する必要がある。

 民進党内は2〜3割が急進独立派で少数派だが、反中反共の発言力は大きい。その急進独立派や中間派は謝氏の訪中には評価が懐疑的だ。今回の謝氏の訪中を皮切りに蔡英文前党主席や蘇貞昌党主席が訪中してさらにパイプづくりを重ねるか、謝氏のパイプのみで対中政策を取り仕切るか、不透明だが、方針次第で党勢の浮沈が大きく変わりそうだ。