香港企画記事速報
2007年6月25日記                           

初の左派入閣で物議 香港政府
筋金入りの親中、着々浸透
返還10周年で民主派警戒


 中国返還十周年を七月一日に迎える香港では二十三日、第三期香港特別行政区政府の新閣僚名簿が発表され、中国政府の任命を得て七月一日から正式スタートする。香港トップの曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官のもと、平均二・一歳の若返り人事で三長官、局長十二人など閣僚が任命されたが、民生事務局長に中国の全国人民大会(全人代)代表香港地区代表を務めた曽徳成(58)氏が新任され、民主派は「伝統的な親中派がついに政府閣僚に加わった」と警戒感を強めている。(深川耕治,、写真も)


第三期香港特別行政区政府の新閣僚たち。中央が曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官
 中国返還後の一九九七年七月以降、香港政府の閣僚は実務経験豊富な公務員幹部が登用されたり、財務経験豊富な企業幹部を抜擢するなど、政治的にはきわめて中立的な立場を保持する人物が多く、穏健親中派の梁愛詩(エルシー・リョン)元律政官以外は際だった親中派の入閣はなかった。

 しかし、返還十年の節目に親中派の政治色がきわめて強い曽徳成氏が初入閣を果たした異例ともいえる閣僚人事に香港メディアの記者からは「刑事罰を受けた伝統的左派の人物が政府の政策責任者になることに問題はないのか」と厳しい質問が相次いだ。

 曽民生事務局長は学生当時の一九六七年、英領香港で香港企業を解雇された労働者たちが前年から始まった文化大革命の影響に感化されて「打倒英帝国主義」を掲げて警察と衝突した「六七暴動」期間、香港政庁に反対するビラをまいて逮捕され、二年間、投獄されていた。当時、貪るように毛沢東語録を読んだという曽氏はその後、中国系香港紙「大公報」編集局長、同副社長となり、四期にわたって全人代香港地区代表を務めた。長兄・曽ト成氏は最大親中派政党・民主建港連盟(民建連)初代党主席を務めるなど、筋金入りの親中派、中国共産党支持者として知られている。

急進親中派の曽徳成民生事務局長
 しかし、曽蔭権行政長官は民生事務局長の人事について「九八年から開始された中央政策組の顧問であり、政府行政に造詣が深い。一番重要なのはいかにその能力を用いるかだ」と政治的な思想背景よりも実務能力での評価を強調。香港政府が発表した曽民生事務局長の個人経歴資料には二年間の懲役刑を受けた記録は一切表記されていない。

 この点について曽氏本人は「四十年前の若い学生時代のことで職務に影響ない。新聞業界と中央政策組での経験を評価されての登用と自負している」と疑念の打ち消しに必死だ。民主派はこの点を厳しく非難すると同時に香港政府に対して二〇一二年の完全普通選挙実施を求め、七月一日に恒例の民主派デモで対抗する方針だ。

 香港ナンバー2の政務官には唐英年(ヘンリー・タン)氏、ナンバー3の財政官には曽俊華氏が抜擢され、五年後の次期行政長官選出時の最有力候補としてこの二人が取り沙汰されている。
 親中派色が強い曽民生事務局長の就任は「左派の実務能力を見る試金石で、評価されればさらに多くの親中派を送り込める」、「香港と中央政府との架け橋となる役割もある」(鄭耀棠全人代香港地区代表)との期待もあり、中央政府にとっては大歓迎の人事。胡錦涛中国国家主席ら中央政府幹部らは二十九日に香港入りし、一日の返還十周年記念式典や政府閣僚就任式などに参加。一日午後には陸路、広東省深セン入りする予定だ。
セン=土ヘンに川


中国返還10周年「1国2制度」の実験