中国企画記事 特選

2004年7月26日記

中国本土の青少年非行の現状
欧米化する性犯罪や麻薬事件
香港や日米から「性解放」流入
一人っ子と拝金主義の驚愕構造
 中国では、一人っ子政策による核家族化の弊害(子供への溺愛、放任)、インターネットの急速な普及、テレビゲーム類の氾濫で青少年非行の元凶や内容が大きく様変わりした。ポルノ情報や暴力映像の氾濫で性犯罪や暴力事件が増え、富裕層である中国共産党幹部の子弟が麻薬などの薬物中毒患者となるなど、青少年非行の問題は中国の国家存亡に関わる重大問題となってきている。
(2004年7月26日=深川耕治記、写真も)


中国遼寧省のネットカフェ風景 中国の青少年非行を知る上で、昨年六月、福岡市で起こった一家四人殺害事件の犯人グループが地方出身の中国人就学生らで、市内の中国人向けインターネットカフェで知り合い、犯罪の接点となったことは、中国の青少年犯罪の現状を分かりやすく物語っている。

 家庭でパソコンがそれほど普及していない中国では、ネットカフェ(写真右)は青少年が気軽に遊ぶ娯楽として人気があり、オンラインゲームやチャットを楽しむのが日常茶飯となっている。

 中国のネットユーザーは今年六月末で八千七百万人(全人口の六・六%)で大半が青少年(未成年は一千六百万人)。米国に次ぐ世界第二のインターネット大国に成長する一方、ネットカフェの違法経営や青少年犯罪への悪影響が顕著になってきている。

 河南省駐馬店市では昨年十一月、同市の無職男性(29)がネットカフェで知り合った中高生ら二十五人を殺害。中国中を震撼させた。〇二年六月、北京のネットカフェでは放火事件が起こり、二十五人が死亡。犯人四人は全員中学生で、以前、店員に注意されたことに腹を立て、復讐のために犯行に及んだことを供述している。

中国広東省深セン市内のパソコン・第三世代携帯電話の特設販売会場 最近では、中国政府が青少年犯罪の温床となっていたネットカフェの規制に本格的に乗り出し、ネットカフェでの遊びが徐々に廃れ始め、携帯電話による短信テキストメール、それを悪用する地下の出会い系サイトが犯罪の新たな温床に取って替わりつつある。

 中国公安省の資料では、全国の犯罪容疑者に占める未成年者の割合は〇〇年が六・八%、〇一年七・一%、〇二年八・〇%、〇三年九・一%と徐々に増える傾向にある。増加傾向にある理由としては、小中高校の周辺環境と治安の変化が挙げられる。

二十四時間営業のネットカフェやゲームセンター、レンタルビデオ店などの娯楽施設が急増し、未成年者らは学校の授業が終わると帰宅せずに学校周辺のネットカフェやゲームセンターなどの娯楽施設に入り浸り、出入りしている犯罪仲介者の甘い口車に乗って手持ちのお金を払い、お金がなくなれば両親に黙ってゆすりや集団強盗などに手を染めるケースが後を絶たない。

 中国青少年犯罪研究会の最新統計資料によると、ここ数年来、三十五歳以下の犯罪件数が全国刑事犯罪案件の総件数の70%に達しており、十五−十六歳の未成年者による犯罪案件はとくに割合が多い。これを「十五、六歳現象」と呼ぶ専門家もいるほどだ。

 北京市朝陽弁護士事務所の胡鋼副主任は「犯罪年齢が四年経つごとに二歳下がっている。ここ数年間で未成年者が関わる犯罪の中で強盗事件が五五%、盗難事件が二八・五%で最上位を占め、綿密な計画を立ててハイテク化された凶暴残虐な内容が特徴」と説明する。一部の未成年者は香港のヤクザ映画(「古惑仔(チンピラ)」シリーズなど)などをまねて犯行に及ぶケースもあり、映像作品の悪影響を指摘している。

中国広東省深セン市内富裕層の子供 テレビゲームでは、日本のアダルトゲームや暴力的なソフトが違法コピーされた形で中国内に浸透し、青少年の視覚心理に及ぼす悪影響は強まるばかりだ。また、〇三年末の中国における麻薬中毒者数は七十四万人に達し、青少年の麻薬乱用がとりわけ深刻な社会問題となっている。薬物乱用による犯罪増加と治安の悪化、エイズ(後天性免疫不全症候群)患者の増加など社会不安の要因にも指摘されている。

 中国の各種犯罪のうち青少年犯罪の占める割合は〇三年時点で全体の六五%以上を占め、「十四〜十八歳の犯罪件数は上昇傾向にある」(河南省鄭州市公安局)と危機感を募らせる。原因としてはポルノ情報の氾濫、黒社会(マフィア)を描く映画作品の悪影響などがあり、家庭では溺愛と放任、生活レベルが豊かになって、離婚率が急増することで家庭解体が始まっていることを挙げている。

 一九八二年六月、中国青少年犯罪研究会(張黎群会長、会員約二千人)が発足した。これまで十数回にわたって「全国性学術討論会」と共に国際学術シンポを開催し、「中国青少年犯罪年鑑」や「中国青少年犯罪学」などの書籍を発行し、会誌である「青少年犯罪研究」は二百号を超えた。

 同研究会の周長康副会長は最新の調査研究結果では、中国の青少年犯罪の温床が拝金主義とフリーセックス、性解放思想流入にあると指摘。そのような価値観、風潮が暴力、ポルノ、麻薬などに青少年を誘惑する環境を増大させ、容易に犯罪に走らせる結果をもたらしている、と警鐘を鳴らす。

 とくに中国では青少年犯罪の発生しやすい十四歳(初等中学二年生)の男女を重点的に教育し、心身ともに健全な教育をすべきだとの対策を提案している。理由は、第二次性徴期に入り、心身共に不安定な時期で、性に対する正しい知識が欠乏しているからだという。具体的例として、浙江省杭州で十五歳の女子学生が十歳から十七歳の男子生徒と性交渉をしたケースを挙げ、性に対する正しい知識、教育が欠けているために起こったとしている。

 深刻な状況下、長期的対策としては、青少年健全育成のための文化的な新たな価値観を啓蒙する国家戦略が必要となってきている。厳格な映画等級制度の確立(ビデオ、DVDを含む)、ネットカフェとゲームセンターへの管理、青少年の性的心理教育の啓蒙強化が不可欠となり、家庭教育の見直し、法律知識の普及なども同時に進めなければならないだろう。

 本来ならば中国官営による青少年犯罪予防機構や青少年心理健康サービスセンターなどの設立が急務だが、明確な解決ビジョンが打ち出せないままの閉塞状況が続いている。(2004年7月26日記)