台湾関連情報   2007年7月14日記

野党優勢、じりじり狭まる 台湾総統選
本土意識高揚で勝機呼び込む 民進党
与党と疑似路線、支持率高く 国民党


 来年三月二十二日に投開票される台湾総統選は与党・民進党の謝長廷元行政院長(首相)と最大野党・国民党の馬英九前主席の一騎打ちの様相を呈している。両陣営は前哨戦となる来年一月十二日の立法院選挙(国会議員選挙)に向けて総動員態勢で勝機を呼び込むが、鍵を握る無党派層の支持を得るには手探り状態が続く。(深川耕治、写真も)


与党・民進党の副総統候補に確定濃厚な葉菊蘭前高雄副市長は06年12月の台北市長選で謝長廷氏の応援演説に熱弁をふるった=深川耕治撮影
 「副総統候補は(陳)総統でなく、自分が決める」。今月初め、謝長廷氏は陳総統が自分に一番近い蘇貞昌前行政院長を副総統候補に推す動きを見せていたことに対し、主導権はあくまで総統候補である自分にあることを強調し、陳総統の介入に不満をぶつけた。二人に齟齬(そご)が野党側の攻撃にさらされる材料になることを懸念した陳総統は、十一日、謝氏と総統府で会談後、「副総統候補は謝氏が決めること」と態度を軟化し、蘇貞昌氏も副総統候補への意欲は見せていない。本来、五月に決定の見通しだった民進党の副総統候補選びは来月までもつれそうだ。

 謝氏は「世論支持の高い人物を選ぶべきだ」とも述べたが、意中の人物は葉菊蘭前高雄市長代理だ。自身は客家人で夫・鄭南榕氏は独立運動家で国民党政権の言論弾圧に抗議して焼身自殺。自身が志しを受け継ぎ、交通部長、行政院副院長などを歴任し、最近も訪日して「謝氏の台湾維新に呼応したい」と謝長廷氏支持を鮮明に打ち出した。

 陳総統は六月、台湾名義での国連加盟の是非を問う国民投票を総統選と同時に行う意向を示し、民進党案として提出したが、選挙管理委員会は同案を却下。党内でも穏健実務派の謝氏は米国側の懸念に配慮し、同案に消極的だった。しかし、行政院(内閣)は十二日、同法案を却下した選挙管理委員会の決定を撤回して受理することを決定。民進党は有権者の五%以上の署名を半年以内に集めれば住民投票が実施可能となるため、九月十五日に百万人規模のデモを準備する動きもあり、署名活動を本格化させる。二十日から訪米する謝氏にとって米国への説明がどうなるか、注目されている。

 一方、馬英九氏は父が国民党幹部の外省人(戦後、台湾に移住した人や子孫)で、香港生まれであることが本省人(戦前から台湾に住む人々)のアレルギー反応を高めることを懸念し、両岸(中台)の現状維持と台湾優先を口にすることが増えて、対中政策での違いが見えにくくなっている。違いは戦前の日本に対する見方で、馬氏は抗日愛国を高く評価、謝氏は京都大学留学経験のある知日派であることだ。

 これまで世論調査では馬氏優勢が続いたが、昨年十二月の高雄市長選での敗北や今年二月、台北市長時代の交際費流用問題をめぐり汚職罪で起訴されて以降、人気は下降気味。党内の本省人代表格である王金平・立法院長(国会議長)に副総統候補就任を拒否され、党内指導力に疑問符がついた。最近では支持率の差は一〇ポイント近くまで迫ってきており、選挙終盤では四年前を彷彿とさせる激戦になりそうだ。