深川耕治=2009年4月27日記

中国メディア批評 独自コラム



 連載 変わりゆく香港「一国二制度」10年の実験
 激戦・台湾総統選2004
 ルポ コピー天国・中国



ユーチューブのゲリラ戦に強硬封殺の中国
同音異義語を駆使、左右両派の発言力拡大に警戒感


毛沢東の出生地である湖南省韶山には高さ10メートルを超える毛沢東の銅像があり、参拝客が絶えない
 中国は10月1日の建国60周年に向け、愛国ムードを盛り上げ、金融危機後の難局を公共投資や職業訓練などで乗り切る道を進んでいる。農民工(出稼ぎ農民)の1割を超える2300万人と都市部の労働者880万人以上が失業し、新卒大学生の就職難が深刻化する中、政府への不満増大を最も恐れる胡錦涛政権にとって政府批判の言論封殺こそ喫緊の課題だ。

 北京五輪閉幕後の経済危機は不動産急落、中国株低迷で底値から若干回復の兆しが見えながらも「第二の底」に陥る不安もあり、官僚の汚職不正が露呈するたびに中国内では毛沢東思想に立ち返ろうとする急進保守派(右派)と自由や民主を求める急進改革派(左派)の二極化が強まる現象が起こっている。

 毛沢東の出生地である湖南省韶山は年間のべ1億5000万人以上の観光客を集める中国共産党の革命拠点をめぐる「紅色観光基地」の一つで、今春は毎日、毛沢東の生家や巨大銅像を「詣(もう)でる」参拝客であふれ、大学合格や恋愛成就の祈願に訪れるほど「神格化」されている。右派の際だった動きの一つだ。

 毛沢東ブームの再来であり、政官癒着の汚職が後を絶たない中国内では「改革開放は共産主義に反する資本主義への道であり、売国路線だ」(「中国毛沢東主義共産党が全国人民に告げる書」)と一貫して主張する一部の毛沢東主義者が息を吹き返して主張がエスカレート。急先鋒だった2003年9月発足の鳥有之郷書社(北京市)は四人組と文化大革命の再評価を政府に要求、ネット上で「毛沢東主義で中南海を粉砕せよ」と表現し、今年2月末、公安当局が事務所を捜索して関係者らを拘束、取り締まりを受けた。台湾では「台湾共産党」が合法組織として認められ、中国共産党と友党関係を呼びかける動きも出ている。

 さらに新民族主義として反響の大きかった「ノーと言える中国」の著者である若手中国人ジャーナリスト5人による続編として「中国不高興(中国は不愉快だ)」が3月に出版され、米中協調による金融危機直撃に強い不満と軍事力強化を主張した中華思想に基づく愛国主義を鼓舞。これが毛沢東賛美につながる内容としてネット世代に支持が広がっている現象も興味深い。

 政治改革による民主化を求める左派の動きも熱い。

 昨年12月、中国各地の学者ら303名が署名して一党独裁廃止や直接選挙実施を求める「08憲章」の発表はネット上で勢いづいている。署名者数は今年2月初め時点で7000人を突破、4月20日の時点で8500人を超えた。

 6月4日の天安門事件20周年を控え、政治改革を進め、民主化に前向きで同事件に発展するきっかけを作った故・胡耀邦元党総書記の再評価を求める動きも活発化している。

香港で今年4月に発売された「中国不高興(中国は不愉快だ)」
 今月末には胡績偉・元人民日報社長や李鋭・元水利省次官(毛沢東の元秘書)、績偉氏、謝韜氏、何方氏ら70〜90歳前後の元党幹部12人が胡氏の徹底した再評価を求める文集「胡耀邦と中国政治改革〜十二人の老党員による回顧」を香港で出版する。同文集は中国内では発禁だが、中国の月刊誌「炎黄春秋」4月号でも李鋭氏が寄稿した「胡耀邦に学ぼう」が追悼論文として掲載され、当局から同誌幹部の人事刷新を迫られながらも編集権の剥奪はかろうじてされず、内容も黙認されている。

 ネット上の当局による民主化世論徹底取り締まりに対しては、同音異字を用いたパロディで攪(さく)乱、検索サイトでの政治的検閲をくぐり抜ける手法が活発化。ユーチューブに民主化弾圧を批判する動画を巧みにアップする手法を取り、当局はネット警察が気づいた段階で次々と削除、閲覧不可能にしていくイタチごっこの状態だ。昨年5月12日に発生した四川大地震で多くの小学校が倒壊して学生が死亡、両親らが学校建設時の安全基準違反を告発する動きも地元政府の徹底封殺でなかなか日の目を見ないが、希望もある。

 今年3月25日、中国内でユーチューブが突然、閲覧できない事態に陥った。昨年3月のラサ動乱で武装警官が棍棒で叩きながらチベット族のラマ僧を拘束するシーンや数々の弾圧場面がアップされ、検閲したことが原因だ。ユーチューブはこれまでも昨年3月16日や2007年10月など、中国内で突然アクセスできなくなる事態が発生している。

 ユーチューブでは今年に入り、「児童合唱『草泥馬の歌』」のアクセスが急増。歌詞は平和な草原で南米のアルパカらしき草泥馬(造語でツァオニーマー=中国語の発音が下品な俗語と一致)が自由奔放に暮らしていて突然、邪悪な河蟹(ハーシエ=「和諧」と同音)が草を食べ尽くそうと攻めて来て草泥馬が団結して河蟹を排除し、打ち負かすという内容。アニメ版も登場し、原作は140万件超、アニメ版は25万件超のアクセス数を更新した。これが政府の弾圧に団結して打ち勝つ中国民衆の姿をパロディ化したものだと気づいた中国当局は同動画をアクセス禁止にし、犯人捜しに躍起だ。同音異義の言葉を使った反権力の主張はユーチューブだけでなく、中国の検索サイトでも続々と誕生しており、ネット上での無限に広がる“ゲリラ戦”に中国当局は当分、頭を悩まされそうだ。(深川耕治=09年4月27日記)



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