台湾関連情報 2007年4月26日記

与野党とも予備選へ最終調整 台湾総統選
馬氏「一本化」で王氏反発 国民党
謝氏と蘇氏抜け出し接戦 民進党


 来年三月の台湾総統選に向け、台湾与野党は総統候補選びの最終段階を迎えている。与党・民進党は呂秀蓮副総統、游錫●(=埜の木を方に)党主席、謝長廷前行政院長(首相)、蘇貞昌行政院長の「四天皇」が予備選で出そろい、謝氏と蘇氏がトップ争い。最大野党・国民党は馬英九前主席のみが立候補し、党内で対立する王金平立法院長(国会議長)は党外立候補の道を探りつつ巻き返しを図っている。(深川耕治)


 民進党の総統公認候補選びは、五月六日の党員約二十五万人による党員投票とその後の世論調査結果を総合(党員投票三割、世論調査七割)して五月三十日に公認候補を最終決定する。台湾紙「中国時報」が十五日に行った最新世論調査結果では、昨年十二月の台北市長選で健闘した謝氏が二二%でトップ。大衆的な人気のある蘇氏が一七%で追い、呂氏九%、游氏二%の順。同紙が二月末に行った調査結果では蘇氏が二六%でトップ、謝氏が一六%で追う展開だったが、逆転している。

 台湾紙「聯合報」の最新世論調査(二十二日)では謝氏が二二%でトップ、蘇氏が一九%で追い、呂氏九%、游氏四%の順。最終的には謝氏と蘇氏の接戦が予想され、選挙結果優先ならば民進党の正副総統候補はこのペアになる可能性が高い。

 支持率トップの謝氏は現憲法の維持を発言して他候補から批判され、「台湾憲法の制定が必要」と前言撤回。候補者演説会で謝氏は「(蘇貞昌行政院長は)立法院で政府予算案が通過しない理由を野党の責任に押しつけている」と蘇氏を批判。蘇氏は「次期総統選の対抗馬は身内ではなく統一派、馬英九、中国大陸だ」と挙党一致を求め、呂氏は「〇〇年は政権交代したので〇八年は性別交代(女性総統誕生)すべきだ」と唯一の女性候補であることを強調。游氏は「昨秋の陳総統辞任要求デモで上司を批判したり個人的な知名度を上げるようなことはしなかった」と他候補が陳総統と距離を置いていることを批判した。

 一方、最大野党・国民党は馬英九前主席が二十二日に党内予備選の立候補を届け出た。締め切りの二十三日までに立候補したのは馬氏のみ。香港生まれの外省人(戦後、台湾に渡った人や子孫)である馬氏に対し、党内最大のライバルである本土派の王金平立法院長は予備選不出馬を表明しており、党執行部は党員投票を行わず、五月初めにも馬氏が党公認候補にする方針だ。

 しかし、馬氏は逆風にさらされ、党分裂の危機に直面している。昨年十二月の高雄市長選で国民党候補が民進党に競り負けて責任問題が浮上したのを皮切りに、二月十三日、台北市長在任中の経費を私的流用したとして検察当局に横領罪で起訴され、党主席を辞任。党長老で馬氏に近い呉伯雄党主席代行が党主席に就任した。馬氏を党公認候補に立て、挙党一致で政権奪還を目指したい党執行部は「一審有罪なら公認候補の資格失効」とする党規約を改正し、馬氏の党公認候補確定へ全面支援していく構えだ。

 だが、王金平立法院長は「特定の人のためのものと化し、公平な競争ができない」と批判。党内人気の高い馬氏と予備選で対決することを避け、夏にも予想される一審判決で世論を見方につけ、無所属での出馬もあり得る状況だ。

 十二月の立法委員(国会議員)選挙も国民党にとって頭痛の種。最多議席を維持する国民党は定員二百二十五議席が百十三に半減するため、各選挙区での候補選びが難航。第二野党・親民党との合併問題でも立法委選での候補配分調整が手間取り、立法委員の半減問題は党内派閥間の様々なきしみを生じさせている。

 馬英九人気は依然根強いとしても〇五年七月の党主席就任時をピークに下り坂。早ければ夏にも予想される馬氏の一審判決で有罪となれば、国民党への非難の声は高まる。十二月の立法委員選後も、与党・民進党と野党・国民党の支持率は拮抗(きっこう)し、王金平立法院長の動き次第では国民党が分裂状態に陥ると〇〇年の総統選と同じく民進党が漁夫の利を得る構図になりかねない状況だ。

 民進党の勝敗の鍵を握るのは、既成政党の枠にこだわらず、台湾本土派の再結集のために中間路線を打ち出した李登輝前総統の存在が大きい。民進党の謝氏、蘇氏、游氏らは個人的に李氏の支持を取り付けようと会談しているが、李氏は政治展望のアドバイスはしても後方支援する動きは見せていない。

 二十一日に行われた台湾団結連盟(台連)の新党綱領宣布大会で李前総統は「過去(国民党政権時代)は白色テロが起こったが、現在(民進党政権)は司法テロが起こりかねない」と民進党政権の司法のあり方を厳しく批判。「与野党対立が続き、予算案が四月に通過せず、人民の幸福から離れてきている」と述べ、陳水扁総統が野党との協力体制で努力不足だとの見方だ。

 むしろ、分裂含みの野党・国民党内で李氏と比較的考え方が近い本省人(戦前から台湾に住む人や子孫)で台湾本土派の王金平氏との協調関係も視野に起き、新たな協力関係を模索している。とくに年末の立法委員選では定員が半減することで国民党は候補者選びに漏れた現職の本土派立法委員らが党執行部の選定に反旗を翻し、台連に合流する可能性も残されている。

 今後、与党・民進党は新憲法制定を推進しながら独立路線を強め、中国大陸との対決姿勢を鮮明にすることで本土派の支持層結束を促し、最大野党・国民党はそれに反発する外省人政党化が進みそうだ。



中国返還10周年「1国2制度」の実験