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2006年2月2日記(深川耕治)

中国人気週刊紙の停刊処分要因となった論文を執筆した袁偉時・中山大学教授

 中国紙「中国青年報」の付属週刊紙「冰点週刊」が先月二十四日、停刊処分を受けた。同紙が掲載した袁偉時・中山大教授の執筆論文「現代化と歴史教科書」が中国の歴史教科書の閉鎖性と問題点を指摘したことが原因だ。

 問題の文章は、中国の中学歴史教科書の誤謬(ごびゅう)を指摘。「中国の学生はオオカミの乳を飲んで成長している」とした上で、例えば一九〇〇年の義和団事件で義和団を民族的英雄に祭り上げて西洋人攻撃のために美化する一方、義和団が行った児童を含む外国人二百三十一人を殺害した残虐行為や愚行に関してはほとんど表記がないと批判している。

 寄稿文中の「オオカミ」とは中国共産党を暗示批判しているのではないか、との意見に対して袁教授は「オオカミとは十九世紀以来の中国人が持っている排外観念であり、偏狭な民族主義。単純化した観念で歴史を描くことこそ、死人を傷つける行為だ」と誤解を解く。

 同文章に対し、中国当局は「帝国主義列強の中国侵略行為に対して厳重に事実に違反しており、中国人の民族感情を著しく傷つけただけでなく、中国青年報のイメージに泥を塗った」と弾劾。即時停刊処分につながった。

 冰点週刊の李大同編集長は同処分に対してネット上で抗議文を掲載。「党中央宣伝部は文化大革命式の罵倒(ばとう)とレッテル張りしかしないのか」「当局の封殺行為は憲法違反であるだけでなく党則にも反している」と反論している。

 一九九五年創刊の冰点週刊は中国中央電視台の「焦点訪談」、南方週末紙の「時事縦横」と共に高い評価を得ており、斬新な切り口に読者の人気は高かった。最近では新型肺炎や張志剛事件でスクープを続けた北京紙・新京報の編集長らが更迭されるなど、胡錦濤政権の言論統制はさらに強化されており、同処分を聞いた袁教授は「まずいことになった」と言論弾圧の本格化を憂慮した。

 広東省興寧生まれ。中国近代史が専門で当時の中国社会や文化問題に関する研究論文が多い。「世界から中国を見ながら真実を話し、自分の言葉で言う」がモットー。著書に「中国現代哲学史稿」「清朝末期の思潮と人物」など。七十四歳。